「辞めたい」と思っているのに、誰にも言えない。
言ったら負けな気がして、甘えだと思われそうで、次の職場でやっていける自信もなくて。気づいたら3年間、ずっとその気持ちを抱えたまま働いていました。
私自身の話です。
ICU の1年目から、ずっと辞めたいと思っていました。でもそれを口にしたことはなかった。言えなかったというよりも、「次の所で働ける自信がない」という気持ちと、「看護師以外の仕事をやる勇気がない」という気持ちが、両方あったと思います。
この記事は、「辞めたい1年目の看護師に3つのことを伝えます」みたいな内容ではありません。ただ、同じように悩んでいる人に、私の体験が少しでも参考になればと思って書きました。
ICU の1年目。処置の多さと先輩への萎縮で、仕事に取り組めなかった
配属されたのは ICU でした。
ICU というのは、重症患者さんを24時間体制でケアする場所です。人工呼吸器の管理、点滴の調整、ドレーンの処理、バイタルの異常への対応。医療的な処置の種類も量も、他の科とは比べものにならないくらい多い。そして、判断のスピードも求められます。患者さんの状態が急変することは珍しくないので、何か起きたとき、素早く動けないといけない。
新人にとって、それだけでもプレッシャーでした。
でも一番きつかったのは、先輩が怖かったことです。
がんばっても怒られる。何か確認しようとしても怒られる。何をやっても怒られる、そう感じるようになると、仕事そのものに取り組む気力がなくなっていきました。処置の多さや判断の速さに疲弊しながら、周りの顔色を見て、萎縮して、1日をやり過ごす。そういう状態が続いていたと思います。
中でも追い詰められたのは、「動いても、動かなくても、結局怒られる」という悪循環でした。何かしようとすれば怒られると思って、手が止まる。でも、何もしないとそれもまた怒られる。仕事はしなければいけないのに、動こうとしても動かなくても結果が同じなら、もう何もできない。そういう麻痺した感覚がありました。
「いつも自分は看護師に向いていないと感じていた」
それが1年目の私の正直な感覚でした。
先輩が厳しかったから向いていないと思ったのか、それとも本当に向いていなかったのか、当時の自分には判断できませんでした。今でも、はっきりとはわかりません。
辞めたいのに言えなかった。3年間
辞めたいという気持ちは、ICU の1年目から、ずっとありました。
でも3年間、それを誰かに言ったことはほとんどありませんでした。言えなかった理由は、今思い返すといくつかあります。
一つは、「次の所で働ける自信がなかった」こと。ICU で怒られながらなんとか続けている状態で、他の職場でやっていけるとは思えなかった。辞めるという選択肢が、頭では浮かんでいても、実行できるイメージが持てなかったのです。
もう一つは、「他の仕事をやる勇気がなかった」こと。看護師以外の仕事は、当時の自分には全く見えていませんでした。他の道に踏み出すくらいなら、今のまま続ける方が安全に感じていたのかもしれません。「辞めたいけど、辞めた後の自分が想像できない」という状態です。
そして正直に言うと、当時の自分は「辞めたいと誰かに言いたいだけだったのかもしれない」という気持ちも、あとになって気づきました。たまっていたものを吐き出したかった。でも言えなかった。その分、しんどさは内側に積み上がっていきました。
結果として、3年間はそのまま働き続けました。
長く続けたからこそ見えてきたものはありました。それは正直に言えます。でも、あの3年間が「正解だったのか」というと、今でもよくわかりません。しんどかったのは確かで、もっと早く誰かに話していたらと思う部分も、あります。
「石の上にも三年」という言葉に、私は半分賛成で、半分は反対です。
長く続けないとわからないことがある、というのは本当だと思います。ただ、「自分に合わなくて辞めたいと思いながら働くのはしんどいだけ」というのも、体験から思うことです。この二つは矛盾していない、とも感じています。
辞めたいと言えない状況が続いているなら、退職の引き止めにどう備えるかを先に読んでおくのも、一つかもしれません。「言えない」の背景には、引き止めへの怖さが混じっていることもあります。
限界のサイン。朝、布団から起きられなかった
1年目の時とは別の時期ですが、職場での関係がうまくいかなかった時期に、朝布団から起きられなくなったことがあります。
体が動かない、という感覚です。起き上がれない。行きたくない、というよりは、動けない。それが続いた時期がありました。
そのときも、私がやったのは「友達に話す」ことでした。
解決策を求めて話したわけでもなく、何か答えを出してもらいたかったわけでもない。ただ、たまっていたものを吐き出したかっただけかもしれません。
いま振り返ると、それは「ガス抜き」でした。話したからといって、状況が変わるわけではない。先輩との関係が良くなるわけでも、勤務がラクになるわけでもない。それでも、抱えたまま塞ぎ込んでいるよりは、ガスが抜けて少し動けるようになる。私には、そのくらいで十分でした。
コーピング(ストレス対処法)は人それぞれです。私の場合は、友達に話すことが一番効いていました。1年目の頃も、関係が悪化した時期も、ずっと同じ方法を使っていました。
一人で抱えていると、それが「辞めたい」なのか「今の職場が合わない」なのか「看護師自体がつらい」なのか、判断しにくくなります。誰かに話すことで、自分の気持ちが少し整理されることがある。そういう経験でした。
もしメンタルがしんどくなっているなら、こちらも読んでみてください。
「辞めたい」は普通のこと。ただし、理由によって選択肢は変わる
少し立ち止まって、データの話をします。
日本看護協会の調査では、新卒看護師の離職率はおよそ7〜8%とされています。10人いれば1人は1年以内に辞めている計算です。「辞めたい」と思ったことがある人を含めると、もっと多いはずです。
この数字を見ると、「辞めたいと思うこと」が特別なことではないとわかります。あなただけではない、と。
ただ、「辞めたい」の中身は人によって違います。
- 先輩や上司との関係がつらい
- 仕事の量や内容が合わない
- 看護師という仕事自体が自分に向いていない気がする
- 体力的に続けられない
この中身によって、「辞めること」が解決になるかどうかも変わってきます。職場が合わなかっただけなら、場所を変えることで変わるかもしれない。看護師の仕事自体がつらいなら、もっと別のことを考える必要があるかもしれない。
私の場合は、ICU という環境と、先輩との関係がつらかった。看護師という仕事が嫌いなわけではなかった、と思います。だから続けてきたのかもしれませんが、当時の自分はそれを言語化できていませんでした。
「辞めたい」の理由を、一度だけ自分に聞いてみることは、無駄ではないと思います。
「向いていない」という感覚は、15年目の今も消えていない
ここからは、もう少し個人的な話を書きます。
ICU の1年目から「看護師に向いていない」と感じていた、と先に書きました。その感覚は、15年目の今も、完全には消えていません。
これはネガティブな告白ではなく、正直な実感として書いています。
なぜ続けてきたのかを問われると、「他の仕事をやる勇気がなかったから」というのが、一番正直な答えです。看護師をやめることが怖かった。それだけです。きれいな理由ではないけれど、これが実際のところです。
向いていない、という感覚がありながら、続けてきた。その間に、色々な科を経験して、幅広いことを学んで、今の自分があります。「続けたことには価値があった」と思っています。
普段なら立ち入れないような場所に、続けてきたから出会えた。ただの看護師として働いているだけでは経験できなかったことも、自分の中に残っています。それは間違いなく、続けないと得られなかったものでした。
でも「向いていない感覚がなくなった」かというと、そうでもない。ICU のあの頃から15年が経って、科も変わって、職場も変わりましたが、「自分はこの仕事に向いているか」という問いに、自信を持って「はい」と言える瞬間は、今もあまりない。
15年目の今、1年目の自分に言葉をかけるとしたら、「よく頑張ったよ。そのおかげで幅広いことを体験できた」と伝えたいです。
それと同時に、「もっと肩を抜いて楽しく働いてな」とも思います。
張り詰めたまま3年間を過ごした自分に、もう少し力を抜いてよかったよ、と。向いていないと感じながらも続けていたことに、過剰に消耗しなくてよかったと伝えたい気持ちがあります。
看護師に向いていないと感じることは、辞める理由にも続ける理由にもなりえます。向いていないから辞める人もいるし、向いていないと思いながら続けて、やがて自分なりの形を見つける人もいる。どちらが正解かは、本人にしかわかりません。
選択肢があることを、忘れないでほしい
私が1年目の自分に後悔することの一つは、「選択肢があることを知らなかった」ことです。
「次の所で働ける自信がない」「他の仕事をやる勇気がない」という気持ちは、本物でした。でもそれは、選択肢が見えていなかったからでもあると思います。
看護師免許は一生有効です。1年目で今の職場を離れても、資格がなくなるわけではありません。急性期の病院が合わなくても、慢性期やリハビリ、クリニック、訪問看護など、働き方は色々あります。職場が合わなかっただけで、看護師という仕事が自分に向いていないとは限りません。
当時の私は、「この職場か、看護師を辞めるか」という二択で考えていたように思います。でも選択肢はもっとあった。それに気づいていれば、3年間の見え方も少し違っていたかもしれません。
「働きやすい職場を探すという選択肢を、忘れないでほしい」
これが、今の私が1年目の自分に伝えたいことです。
辞めることを勧めているわけでも、続けることを勧めているわけでもありません。選択肢があることを知った上で、自分で決めてほしい。そういう気持ちです。
私自身は14年目で転職しました。その後のことは、別の記事に書いています。40代での転職に不安があった話も含めて、正直に書いたので、参考になればと思います。
辞めるか続けるかを考え始めたなら
「辞めたい」から「辞めようかな」に変わってきたなら、次に考えることが出てきます。
一つは、今のつらさの原因が何かを整理すること。人間関係なのか、仕事の内容なのか、勤務形態なのか。原因によって、転職先の選び方も変わります。
もう一つは、一人で全部抱えないこと。友人でも、学校の先輩でも、転職の相談窓口でも。話すことで、自分の気持ちが整理されることがあります。
退職を切り出すのが怖くて動けない場合、退職代行という選択肢を知っておくだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
転職を具体的に考え始めたなら、複数のサービスを比較してみることも一つです。評判・サポート内容・使いやすさで整理しているこちらも参考にしてみてください。
→ 【2026年版】看護師転職サイトおすすめ3選|現役ナースが本音で比較
まとめ
3年間辞めたいと思いながら言えなかった自分の話を書きました。
向いていない感覚は今も消えていない。あの3年間が正解だったとは断言できない。それでも、続けてきたことに価値があったとも思っています。
「辞めたい」という気持ちは、弱さではありません。ただ、その気持ちをどう扱うかは、選択肢を知っているかどうかにもよります。
職場を変えるのか、科を変えるのか、働き方を変えるのか、それとも今の場所でもう少し続けてみるのか。正解は人によって違います。
私自身、3年間言えなかった気持ちを、今こうして文章にしながら少しずつ整理しているところがあります。正解はまだ持っていません。
ただ、1年目の自分にもう一度会えるなら、「もっと肩を抜いて楽しく働いてな」と、それだけ言えればいいなと思っています。
よくある質問
看護師1年目で辞めたいのは甘えですか?
日本看護協会の調査では、新卒看護師の約7〜8%が1年以内に離職しています。10人に1人は辞めているということです。
「甘えか甘えでないか」という問いに、正直に答えると、私にはわからないと思っています。ICU の1年目から3年間、「自分が弱いだけなのかもしれない」「甘えかもしれない」と思いながら働いていました。でも今振り返ると、その問いにこだわっていた時間が、一番しんどかったかもしれません。
「辞めたい」という気持ちを甘えと判断することより、「なぜ辞めたいのか」「何が自分にとってつらいのか」を一度整理する方が、私自身は救われたと思っています。自分の気持ちを置き去りにしないで、というくらいの気持ちで、この回答を書いています。
看護師1年目で辞めたら、その後のキャリアは大丈夫ですか?
看護師免許は、一生有効です。1年目で辞めても資格がなくなるわけではなく、第二新卒として転職活動ができます。看護師の求人数は多く、1年目での退職が転職市場で大きなマイナスになるかというと、そうでもないのが現実です。
私の場合は1年目では辞めなかったけれど、14年目で転職しました。「こんな年で転職してもいいのか」と不安だったのは事実ですが、職場が変わっても、なんとかなりました。むしろ、転職して初めて「もっと早く動いてよかった」と思えたことがあります。
「辞めたら終わり」ではない、というのが、14年経って振り返っての実感です。選択肢がある、と知っているだけで、目の前のしんどさの見え方が少し変わることもある気がしています。
