カンファレンスで「なんで?」と聞かれて、答えられなかったことがあります。

1回だけじゃない。毎回です。

主任から「なんでそうなるの?」と問われるたびに、頭の中が真っ白になって、言葉が出てこなかった。席に座ったまま、どこを見ていいかもわからない状態で固まっていました。

あのとき何が足りなかったのか。参考書を読んでも解決しなかったのはなぜか。プリセプターになってようやく言語化できた「比較する」という動き。この記事ではそのことを書きます。


カンファレンスで「なんで?」と聞かれて、答えられなかった

1年目のとき、主任が毎回カンファレンスで「なんで?」と聞いてくるのがつらかった。

「なんでこの患者さんに浮腫が出てるの?」「なんでこのバイタルが変化したの?」。一つ答えると、また「なんで?」。答えられないと、また「なんで?」。

突然、頭がパニックになる。

「何を答えたらいいんだろう」「どこから話せばいいんだろう」と考えている間に時間が過ぎて、結局黙り込んでしまう。フリーズする、という感じが正確です。考えていないわけじゃない。でも何も出てこない。

怖い、というより、自分でも何がわかっていないのかわからない状態でした。

「アセスメントができていない」と言われても、アセスメントの何ができていないのか、自分ではつかめていない。だから直しようもない。直せないから、また次のカンファレンスで同じことが起きる。そのくり返しでした。

同じような経験がある方は、看護師1年目で辞めたいと思ったとき も読んでみてください。「自分だけ」じゃないと思えることが、少し助けになるかもしれません。


参考書を読んでも、現場で答えられるようにはならなかった

「勉強すればできるようになる」と思っていたので、自分で参考書を買って読みました。

疾患の知識は増えました。「心不全なら浮腫、呼吸苦、体重増加」「肺炎なら発熱、酸素飽和度の低下、痰の変化」。そういう情報は頭に入ります。

でも、カンファレンスで答えられるようにはならなかった。

知識はあるのに、目の前の患者さんに当てはめられない。「この患者さんに心不全の知識をどう使えばいいのか」がつながらない。何かが足りていると感じているのに、その「何か」が当時はつかめませんでした。

今になって理解できるのは、アセスメントというのは「疾患の知識」と「目の前の患者を観察すること」のあいだにある、もう一つの動きが必要だということです。参考書は「知識」を教えてくれます。でも「比べる動き」を教えてくれる参考書はほとんどありません。

「勉強しているのに現場で活かせない」という感覚は、アセスメントだけに限らない話かもしれません。新人看護師のミスが怖い:怒られても立ち直れる考え方 に、似たような悩みを書いています。


プリセプターになって、初めて気づいたこと

新人を教える立場になったのは、数年後のことです。

プリセプターとして担当の新人さんに指導するようになって、初めて「自分が何をやっているか」を言葉にしなければならなくなりました。

「アセスメントはどうやるの?」と聞かれたとき、最初は答えられませんでした。私が1年目のときと同じように。

でも、一緒にケアに入りながら少しずつ言語化していったとき、自分が無意識にやっていた動きが見えてきました。

「参考書に書いてある状態と、目の前の患者さんの状態を、意識して比較すること」

これだけでした。

教科書では「正常な状態」を示してくれます。「体重増加・浮腫・呼吸苦が出れば心不全」というように。でも現実の患者さんは教科書通りには現れない。体重は変わっていないけど、夜中に起き上がって呼吸しているとか。「典型的ではないが、何かある」という判断をするためには、教科書の知識を基準にしながら「この患者さんは違うのか同じなのか」を意識して比べる必要がある。

それが「アセスメント」という動きの入口だったんです。

言葉にして初めて、「自分は何年もこれをやっていたんだ」と気づきました。そして同時に、「1年目のとき、誰もこれを教えてくれなかった」とも感じました。


「比較する」って、具体的にどういうことか

もう少し具体的に書いてみます。

たとえば、心不全のある高齢の患者さんを受け持ったとします。

参考書や教科書には「心不全の悪化サインは浮腫・体重増加・呼吸苦・起坐呼吸」と書いてあります。これが「基準」です。

次に、今受け持っている患者さんを見る。「体重は今週変化なし。でも昨日から夜に起き上がって呼吸していると夜勤者から引き継ぎがあった」。

ここで「比較」が起きます。「浮腫や体重増加はないが、起坐呼吸の可能性がある。典型的なサインが全部揃っていないが、呼吸の変化は悪化のサインかもしれない」。

この「基準と現実の差を意識的に見る」という動き一つで、アセスメントの入口は開きます。

参考書を読んでも現場で使えないのは、「知識」を「比較の基準として使う」という発想が抜けているからだと、今は思っています。「覚えなきゃ」から「基準として使う」に切り替わったとき、少し変わる気がします。

プリセプターとして教える側に立つ大変さについては、プリセプターがつらい:後輩の指導で消耗しているときに読む記事 にも書いています。


答えられなかった自分は、ダメだったのか

プリセプターになってこの動きを言語化してから、1年目の自分のことを振り返りました。

あのとき、私は「アセスメントができない自分がダメだ」と思っていました。勉強が足りない、頭が悪い、看護師に向いていない。そういう方向に考えていた。

でも今は違う見方をしています。

「意識して比較する」という動きを、誰も明確には教えてくれなかった。「アセスメントしなさい」とは言われます。でも「何を基準に、何と何を比べるか」を具体的に教えてもらえたことは、少なくとも私の新人時代にはありませんでした。

カンファレンスで「なんで?」と問い詰められること自体は、教育の一形態として間違っていない部分もあります。問いを繰り返すことで思考を深めさせる意図があります。でも、比較する「型」を持っていない状態でそれをされても、私のようにフリーズするだけでした。

答えられなかったのは、知識が足りなかったからではなく、「比較する動き」を知らなかったから。能力の問題ではなく、教わっていなかっただけだと思っています。


今、同じように苦しんでいる人に伝えたいこと

カンファレンスで「なんで?」と問い詰められて、頭が真っ白になっている看護師の方へ。

参考書を読んでも活かせなくて、自分の能力を疑い始めている方へ。

私は、「比較する動き」に気づくまでに何年もかかりました。1年目で気づけなかったし、参考書を読んでも気づけなかった。プリセプターになって、教える立場にならないと言語化できなかった。

気づいたからといって、すべてがスッキリしたわけでもないです。今も苦手な場面はあります。「比較する」という動きを知っても、それだけで全部解決するわけじゃない。

ただ一つ言えるのは、答えられなかったのは、あなたが悪いんじゃないということです。

「アセスメントができない」と感じている新人看護師の方が、もしこの記事を読んで「そういうことか」と少しでも思えたなら、書いてよかったと思います。「自分だけが理解できていない」という孤立感が、少しでも和らいでくれたら。

カンファレンスのプレッシャーや毎日のしんどさが積み重なって、心と体に出ている方もいるかもしれません。「眠れない」「出勤前から気持ち悪い」という症状が続いている場合は、看護師が心療内科を受診したとき:行くか迷っている方に向けて も読んでみてください。


よくある質問

Q. アセスメントが苦手な看護師は、まず何から始めればいいですか?

担当している患者さん1人に絞って、「教科書に書かれている状態」と「今日の患者さんの実際の状態」を並べて書き出してみることが入口になると思います。複数の疾患を一度に考えようとしない方がいいです。

私自身、最初から全部できたわけではありませんでした。「比較する」という動きに気づいてからも、すぐに全部がうまくいったわけじゃない。プリセプターになって言語化できるようになるまで、何年もかかっています。焦らなくていいです。


Q. 参考書を読んでもアセスメントができるようにならないのはなぜですか?

参考書は「疾患の知識」を教えてくれますが、「目の前の患者さんと比較する動き」を教えてくれません。知識を「持っている」ことと、知識を「比較の基準として使える」ことは別のスキルです。

私が1年目のとき感じた「知識はあるはずなのに、当てはめられない」という感覚は、その「比較する動き」が抜けていたからだと今は思っています。当時はその「何か」が何なのか、まったくわかりませんでした。


Q. カンファレンスで先輩に質問されたとき、どう切り返せばいいですか?

完璧に答えられなくていいです。「○○は確認しましたが、△△との関連がまだ整理できていません」のように、どこまで考えたかを伝えるだけでも十分です。

私は当時それができませんでした。咄嗟に聞かれるとパニックになって言葉が出てこなかった。今振り返ると、「どこまで考えたかはわかるんですが、そこから先がまだ整理できていない」と正直に言えるだけで、少し違ったかもしれません。完璧な回答をしなければという思い込みが、パニックをさらに深くしていた気がします。


Q. アセスメントができるようになるまで、どのくらいかかりますか?

正直に言うと、「○年で身につく」とは言えないと思っています。担当する患者さんの疾患や状態によっても変わりますし、個人差もある。

私の場合、「比較する」という動きを言語化できたのは、プリセプターとして新人を指導するようになってからです。1年目から数えると、何年もかかっています。「気づいたらスッキリした」わけでもなく、少しずつ積み上がっていく感じでした。


Q. アセスメントが苦手だと、看護師に向いていないのでしょうか?

向いていない、とは思わないでほしいです。アセスメントは看護の一部であって、それが苦手なことと看護師に向いていないかどうかは、別の話だと思っています。

私自身、「向いていないかもしれない」という感覚は今も時々出てきます。15年目になっても、です。でも続けています。向いていないと感じることと、続けられないこととは、必ずしも同じではないと思っています。アセスメントが苦手だからといって、今の場所を急いで諦める必要はないです。


「答えられないのはあなたが悪いんじゃない」——それが、1年目のときの自分に一番伝えたかった言葉です。

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ハロ
看護師歴15年。ICU・外科病棟・精神科身体合併症病棟・地域包括ケア病棟と4科を経験。現在も現役で病棟勤務をしています。 特に精神科身体合併症病棟では12年勤務し、精神疾患を抱えながら身体合併症の治療を要する患者さんと向き合ってきました。看取り、認知症ケア、終末期、急変対応――現場でしか得られないリアルを大切に、自分の体験と感情を正直に書くブログを運営しています。 「正解を教える」のではなく、「同じ目線で一緒に考える」スタンスで、読者の方が少し楽になる文章を目指しています。 【主な発信テーマ】 ・看護師のキャリアと転職 ・精神科看護のリアル ・看護師のメンタルヘルス ・現場で感じた違和感や気づき
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