辞めたいと思い始めて、もう3年になる。

でも、辞められていない。毎月そう思いながら、なんとなく続けている。夜勤明けに「やめてやる」と思っても、翌日には出勤している。

そういうループに、自分もずっといました。

「辞めたいけど辞められない」は、別に珍しいことではありません。同じ状態にいる人はたくさんいます。でも、ループしている間は「辞められない自分がおかしいのかな」と思いやすい。

そうじゃないと思います。辞められないには、辞められない構造がある。それを少し整理してみたいと思います。


「辞めたいけど辞められない」のループにいる人へ

辞めたいとずっと思っているのに、辞められない。

そのループにいたとき、自分は「辞めたいと言いたいだけだったのかもしれない」と後で気づいた部分があります。誰かに聞いてほしかった。吐き出せたらそれで少し落ち着いた。でもループからは出ていない。

正直に言うと、当時辞められなかった一番の理由は、「次の所で働ける自信がなかった」ということだったと思っています。お金の不安とか、周囲の目とか、そういう言葉で整理しようとしていたけれど、根っこにあったのは「自分が別の職場でやっていけるかどうか分からない」という不安でした。

辞められない理由は、人によって違います。でも大きくいくつかのパターンに分かれます。

  • お金の不安(生活できなくなる、収入が落ちる)
  • 看護師以外に何もできないという思い込み
  • 「辞めたら後悔するかも」という恐れ
  • 周囲の期待やプレッシャー

これらはどれも、辞めることへのブレーキです。ブレーキが強ければ、アクセルを踏んでもループするだけです。

だから「辞められない自分が弱い」のではなく、ブレーキの強さに引っ張られている状態です。まずそこを認識するところから始まると思っています。


辞められない「縛り」を一つずつ見ていく

お金の縛り

「生活できなくなる」「収入が落ちる」という不安は、辞められない理由の中でも特に大きいものです。

でも少し立ち止まって考えてみると、「辞めたら収入がゼロになる」と「転職したら収入が下がる」は別の話です。

前者は退職してしばらく働かない場合。後者は転職先でも看護師として働く場合。看護師として転職する場合、収入が大きく落ちるかというと、必ずしもそうではありません。

「本当にお金が理由なのか」と一度問い直してみると、「実は転職しても収入はそんなに変わらないかもしれない」という可能性が見えてくることがあります。

看護師以外にできることがないという縛り

「看護師しかできない」という感覚は、看護師として長く働けば働くほど強くなりやすいと思います。

でもこれは思い込みの部分も大きい。看護師の経験は、看護以外の場面でも活きることがあります。

「本当に看護師しかできないのか」。その問い自体を持つことが、縛りをほどく第一歩かもしれません。

「辞めたら後悔するかも」という縛り

辞めることへの恐れです。これは経験してみないとわからない部分が大きい。

「後悔するかも」という恐れは、人によってはとても大きなブレーキになります。でも少し立ち止まって考えてみると、「辞めた後悔」と「辞めなかった後悔」は両方あり得ます。「後悔するかも」は、辞めた場合だけに当てはまるわけではないはずです。

「後悔するかも」という恐れが、現在の「しんどい」を引き伸ばし続けているとしたら、その縛りが本当に正しい判断を守ってくれているのか、一度問い直す価値はあると思っています。

周囲の期待という縛り

家族の期待、奨学金を出してくれた病院への義理感、「せっかくここまで来たのに」という周囲からの言葉。これは外から来るプレッシャーです。縛りの中でも見えにくい分、重いものがあります。

ただ、この縛りは「自分がそうしなければならない」と感じているのか、「周囲が実際にそれを強く望んでいる」のかで、意味が変わってきます。奨学金への義理感についても、「義務として感じている」のか「自分の感情として責任を感じている」のかは、分けて考えてみると少し整理しやすくなることがあります。

外からの縛りのように見えても、実は内側から自分を縛っている場合もある。それに気づくだけで、少し重さが変わることがあります。


「お金がないから辞められない」は本当か

自分が転職を考えたとき、「収入面は下げたくなかった」というのが絶対条件でした。

それが怖かったというより、生活に直結することだったので、そこだけは譲れないと思っていました。結果的に転職後の年収はほぼ変わりませんでした。今振り返ると、そこが「辞められない」の一番大きかった縛りでしたが、実際には変わらなかった。

ただ、転職までのブランク期間があって、そのときは正直しんどかったです。社会とのつながりがなくなった感覚があった。家族や友人はいるけれど、「社会の中にいる」という感覚がなくなる。それが思ったより重くて、焦って次の職場を探し始めました。原動力というより焦りで動いていた時期でした。

でも今思えば、その焦りが転職を一歩進める力になったことも確かです。ブランク期間の不安は大きかったけれど、看護師は転職先が見つかりやすい職種でもある。そこは自分の中で一定の安心材料になっていました。

もちろん職場によって違います。病院から訪問看護、病院からクリニックなど、職場の種別によって年収が変わることはあります。ただ、「辞めたら収入がゼロになる」という恐れと、「転職したら収入が落ちる」という恐れは、切り分けて考えた方がいいと思っています。

看護師は職種としての単価が比較的高く、即日退職→即日入職が可能な求人も少なくありません。ブランクなしで転職できれば、生活への影響は小さくなります。

それでも「自分の場合はどうなんだろう」という不安が残るなら、一度具体的な年収の数字を見てみることが最初の一歩になります。看護師の年収のリアルについては、看護師の年収が低いと感じる理由と現実で詳しく書いています。


「看護師しかできない」は思い込みかもしれない

自分は転職を考えたとき、看護師以外の選択肢はほぼ考えませんでした。

正確に言うと、「考えつかなかった」というより「他の仕事をやる勇気がなかった」という方が近い。それが正直なところです。今もその気持ちは消えていません。

ただ、看護師以外への転職を考えている人に対しては、「全然やったらいい」と思っています。自分のやりたいことへ挑戦することを止める理由はないし、看護師はいつでも戻れる。無職になる心配はほかの職種に比べると少ない職種だと思っています。

看護師の経験は、コミュニケーション力、観察力、記録の正確さなど、業種を問わず活きる部分があります。「看護師しかできない」という縛りが強い方は、異業種転職の現実についても一度見てみると、視野が広がるかもしれません。看護師から異業種へ転職するとき考えることも参考にしてみてください。


辞めなくてもいい選択肢もある

「辞めたい」の中には、大きく2つのパターンがあります。

「この職場が嫌だ」と「看護師自体を辞めたい」は、解決策が違います。

前者なら、異動・病棟変え・職場を変えることで解決する可能性があります。後者なら、職種ごと変える選択が必要になります。

自分の場合は、転職前にいた精神科病棟で師長との関係が大きなストレスになっていました。その師長がいつ異動になるか分からなかった。異動を待つことも選択肢でしたが、つらい状態が続くことに耐えられませんでした。環境の問題だったので、環境ごと変える必要があると判断しました。

夜勤を減らす、時短で働く、パートに変えるという選択肢もあります。「辞める」以外の方法で働き方を変えることが、まず試せることかもしれません。どの選択が合っているかは、「この職場が嫌」なのか「看護師自体が嫌」なのかを自分に問うことから始まると思います。


辞めると決めるのは、準備ができてからでもいい

「辞めたい」と思いながらも、ループしていた時期があります。

そのとき一番助けになったのは、友人に話を聞いてもらうことでした。散々話して、聞いてもらって、やっと気持ちが整理されてきた感覚がありました。「やめても大丈夫、次でも続けられる」という言葉が、背中を押してくれた部分は確かにあります。

「焦って決めなくていい」とは思っています。でも、ループに入ったまま時間が過ぎていくだけの状態が長く続くのは、それはそれで消耗します。

情報収集、信頼できる人への相談、転職サービスへの登録だけでもしてみる。そういう「小さく動く」ことが、ループから出るきっかけになることがあります。

引き止めが怖くて一歩踏み出せない方は、看護師の退職を引き止められたとき、どう対処するかが参考になるかもしれません。

転職するかどうかより先に、「タイミングはいつが適切か」を知りたい方は、看護師の転職タイミングの考え方も読んでみてください。


まとめ

「辞めたいけど辞められない」のは、辞められない構造があるからです。

お金の不安、看護師しかできないという思い込み、周囲の期待、後悔への恐れ。これらは縛りとして機能していますが、一つずつ見ていくと、実際には「そこまで重くなかった」というものも含まれています。

自分が後から振り返って気づいたのは、縛りの一番の正体は「次の所で働ける自信がなかった」ということでした。お金の不安や周囲の期待というよりも、「自分が別の職場でやっていけるか分からない」という不安が、いちばん大きなブレーキだったと思っています。

実際に転職してみて感じたのは、「なんとかなる」でした。年収は変わらなかったし、次の職場でも働けた。転職前の自分が信じていたほど、縛りは絶対的ではありませんでした。

ただ、これは誰にでも当てはまるわけではないし、自分にとっての縛りは自分で見極めるしかありません。焦って決断する必要はないけれど、何が自分を止めているのかを一度整理してみることが、最初の一歩になるかもしれません。

辞めたいと思う気持ちは、ちゃんとした理由があると思います。実際に辞めた体験談が読みたい方は、看護師を辞めて転職したリアルな体験談に書いています。同じように悩んでいた時期のことも含めて書いているので、よかったら読んでみてください。

あなたの「縛り」の正体が少し見えてくるといいな、と思っています。

今の職場、このままでいいですか?