看護師から異業種へ。転職を考えたとき知っておきたいこと
異業種転職を考えたことはあるか、と聞かれたら、正直に言うと「考えつかなかった」という答えが出てくるくらいには、私は看護師以外の選択肢を見てこなかった人間です。
15年間、看護師として働いてきました。転職もしました。でも転職先も看護師です。「他の仕事ができるかもしれない」と思ったことがないわけではないですが、それが選択肢として浮かんでくるかというと、なかったんですよね。
だから、この記事を書くにあたって少し考えました。「異業種転職の経験がない自分が、このテーマを書いていいのか」って。
でも逆に、「看護師以外を考えたことがない」という視点からこそ、伝えられることがあると思って書くことにしました。看護師の中で消耗しながら「本当は別の道があるのかな」と感じている人に、少し届くといいなと思っています。
「看護師以外にできることがない」は本当か
「看護師しかできない」と思ったことが、ある人は多いんじゃないかと思います。私もそういう感覚をぼんやり持っていた時期があります。
ただ正確に言い直すと、「看護師しかできない」というより「看護師以外を考えたことがない」でした。この2つは、似ているようで少し違います。
できない、という言葉の中には「他の仕事には通用しない」という意味が含まれています。でも私の場合は、通用するかどうか考える前に、選択肢として浮かんでこなかった。看護師を続けることが当たり前の前提になっていたので、「他に何ができる?」という問いが自分に向かなかったんです。
これは「思い込み」なのか「本当のこと」なのか、正直なところ自分でもよくわかりません。他の仕事を試したことがないので、比べようがない。
ただ一つ言えるのは、「看護師しかできない」と感じているなら、その感覚は一度立ち止まって眺めてみる価値があるかもしれない、ということです。思い込みから来ているのか、本当の強みとしての自覚から来ているのかで、その後の選択肢の広がり方が変わってくるので。
看護師という仕事は、専門職です。専門職であるがゆえに、他の仕事の話が遠く感じやすい。15年同じ分野で働いてきたら、そうなるのは自然なことだと思います。「看護しかできない」は思い込みではなく、専門職として長く生きてきた結果でもある。そこは別に恥ずかしいことでもなんでもないと思っています。
看護師の経験が活きる異業種
「異業種転職」とひと口に言っても、看護師の経験を活かしやすい仕事から、まったく別のフィールドに飛び込む仕事まで、幅はかなり広いです。
看護師の経験が活きやすい異業種として、よく挙げられるものを並べておきます。
医療・健康系の企業・職種
– 治験コーディネーター(CRC):臨床試験に関わる仕事で、医療知識と患者対応の経験が直結する
– 医療機器メーカーの営業・サポート:機器の使い方を医療者に説明する仕事。病棟での経験が活きやすい
– 製薬会社のメディカルアフェアーズやMSL:専門的な医学知識を活かす職種
産業保健・企業の健康管理
– 産業保健師:企業に所属し、従業員の健康管理を担う。看護師免許で応募できる場合も多い
詳しくは企業看護師への転職について書いた記事もご覧ください。
福祉・教育系
– 保育園の看護師(保育士との兼務もある)
– 特別支援学校の看護師
– 介護施設の看護師(これは「異業種」というより「職場別の転職」に近いですが)
まったく別のフィールド
– IT企業のヘルスケア部門
– 保険会社(医療系の知識が評価されることがある)
– 福祉系のNPO・社会起業
正直なところ、「看護師だから活かせる」という売り込み方ができる職種と、「看護師であることをいったん忘れて」飛び込む職種では、転職のしんどさも異なります。前者は比較的ルートが見えやすく、後者は未経験からのスタートに近くなります。
異業種転職のリアル
転職を考えるとき、「年収が下がるかもしれない」という不安は多くの人が持つことだと思います。
看護師の年収が低いと感じている方も多いですが(看護師の年収のリアルはこちら)、異業種に出ると「看護師の年収はそこまで低くなかった」と気づくケースも少なくありません。特に資格手当・夜勤手当が含まれていた場合は、そのあたりがごっそり消えることもあります。
もう一つ正直に言っておきたいのは、「看護師はいつでも戻れる」という点です。
看護師免許は国家資格であり、失効しません。異業種に転職して合わなかったとしても、看護師に戻ることは現実的にできます。ブランクがあっても復帰している看護師は多いです。
この「セーフティネットがある」という感覚は、思いのほか大事で。「もし失敗したら終わり」と思っていると踏み出せない選択も、「いざとなれば戻れる」と思えると少し軽くなることがあります。
ただ、「後悔しやすい転職のパターン」というのも存在します。転職の判断で気をつけたいことはこちらの記事にまとめています。
看護師を辞めるか、環境を変えるか
私が転職を考えたとき、「看護師を辞めたい」という気持ちはありませんでした。辞めたかったのは「今の職場」でした。
きっかけは師長との人間関係でした。職場のしんどさは確かにあって、その中で「もうここを出なければ」と思った。でも、看護師という仕事が嫌になっていたわけではなかった。患者さんと向き合う時間は、消耗しながらもまだ意味を感じていた。
だから転職先も、看護師を続ける選択をしました。「もっとゆっくり、患者一人一人と向き合える場所で働きたい」という希望がありました。
今振り返ると、「辞めたいのは看護師なのか、今の職場なのか」の切り分けが、自然にできていたんだと思います。当時は言語化していなかったけれど、自分の中では感覚的にわかっていた。
この切り分けはかなり大事で、混ざったままだとしんどい選択をすることがあります。職場への不満が「看護師を辞めたい」という言葉に変換されてしまうケースは少なくないと思うので。
「看護師を辞めたい」と感じているとき、それは本当に「看護師という仕事が合わない」なのか、「今いる環境が合わない」なのか。どちらとも言い切れない場合も多いと思うし、そこに正解はないですが、自分の中でどちらに近いかを確かめてみることは、選択肢を広げることにつながると思っています。
異業種に行かなくても、看護師の中で環境は変えられる
私が転職で変えたのは「職場」でした。急性期から慢性期への転職です。
急性期(精神科身体合併症病棟)から地域包括ケア病棟に変わって、働き方はかなり変わりました。年収はほぼ変わらなかったです。ただ、通勤が楽になって、残業も減りました。
一番大きかったのは、「前の師長との折り合いの悪さから来るモヤモヤから解放されたこと」でした。それがストレスの大部分を占めていたんだと、移ってから気づきました。
「転職で得たのは、年収ではなく、消耗が減った分の余白だった」と今は思っています。余白が増えると、考える余裕も、ちょっと試してみようという気持ちも少し戻ってくる。そういう変化がありました。
看護師の中でも、選択肢はたくさんあります。
– 急性期 → 慢性期 / 地域包括ケア
– 病院 → クリニック(クリニック転職のリアルはこちら)
– 入院 → 外来
– 病院 → 訪問看護
「異業種」だけが環境を変える方法ではない。看護師のまま「別の世界」に移ることができる。それを実感として持っています。
急性期を離れることへの不安もありました。「急性期のスキルが錆びる」とか「また戻れなくなるかも」とか。でも、体力的に長く続けられるかという不安の方が大きかったし、そちらを選びました。
どの道を選んでも、看護師の経験は消えない
「職場が変わってもなんとかなる」という実感が、15年でようやく積み上がってきました。
転職して最初は不安でした。でも「なんとかなる」。それが今の正直な感覚です。
自分自身は異業種転職をしていません。看護師以外の道を真剣に考えたこともあります。コロナ禍で副業が話題になった頃、ちょうど職場の人間関係でしんどかった時期も重なって、「他の働き方があるんじゃないか」と思い始めた。税理士・FP・社労士などをネットで調べたこともあります。ただ本格的な勉強には進まなかった。「夜勤と残業がある状態で勉強を続けられる気がしない」という現実的な壁がありました。
代わりに選んだのがブログでした。普段から頭の中でいろいろと考えていることを、形にしてみたかった。それが自分に合っていたんだと思っています。
「勇気がなかったから看護師を続けた」という気持ちが、正直なところないわけでもないです。異業種に踏み出さなかったのは、恐かったという部分も確かにある。それは今もどこかにあります。
でも、異業種に転職を考えている人に対しては、「全然やったらいい」と思っています。看護師免許はなくならない。いつでも戻れる。だから無職になる心配は、他の職種よりずっと少ない。そのセーフティネットを使って挑戦してみるのは、決して無謀な選択じゃない。
好きなこと、やりたいこと、得意なこと。それぞれやってみないとわからない部分がある。いろんなことに挑戦して、それらを掛け合わせたものを探していくしかないと思っています。毎日楽しく過ごすために。
まとめ
「看護師しかできない」は、思い込みかもしれません。ただ一方で、「看護師以外を考えたことがない」だけという場合もある。この2つは、少し違います。
自分が「看護師を辞めたいのか、今の職場が嫌なのか」を切り分けることが、最初の一歩になります。その答えによって、向かう先は変わってきます。
看護師の中で環境を変える。異業種に飛び込む。副業から別の道を探す。どれも正解で、どれも間違いではない。
自分に合う転職について一歩踏み出したいと思ったとき、情報収集から始めてみてください。看護師の転職サイトの比較はこちらにまとめています。どの道を選ぶにしても、情報を持っておくことは損にならないと思います。
どの道を選んでも、今まで積み上げてきた経験は消えません。それだけは、15年かけて自分が確かめてきたことです。
よくある質問
Q: 看護師から異業種に転職して、また看護師に戻れる?
看護師免許は国家資格であり、更新が不要で失効しません。異業種を経験したあとでも、看護師に戻ることは制度的には可能です。ブランクがあっても復帰している看護師は多く、ブランク後の復帰を支援する求人も存在します。
自分自身は異業種転職をしていませんが、「看護師免許があるから、いつでも戻れる」という感覚は、ずっと自分の中にあります。その安心感があるから、「一度試してみる」という選択もできると思っています。セーフティネットとして機能する資格を持っているという事実は、もう少し積極的に利用していいものだと感じています。