特定の人だけに当たりが強い先輩がいる。
意見を言っても必ず否定される。人前で大声で怒られる。他のスタッフにはしない。

そういう環境に長くいると、だんだん「自分が悪いのかな」と思い始めます。
おかしいと感じている自分の方がおかしいのかな、と。

でも、それは違うと思います。

私自身、前の職場でそれに近い経験をしました。新しく来た病棟師長と折り合いが悪化して、3年間、言い出せないまま過ごしました。「辞めたい」と口に出せるようになるまでに、それだけの時間がかかった。

この記事では、お局問題に巻き込まれたときに知っておいてほしいことを書きます。
対処法の羅列ではなく、「この状況をどう捉えるか」「自分をどう守るか」の話です。


お局問題は個人の問題じゃなく、構造の問題

「なぜあの人はああなってしまったのか」を考えるより先に、一つ理解しておきたいことがあります。

お局的な先輩が生まれやすい職場には、構造的な理由があります。

看護師の職場は閉鎖的です。同じメンバーで何年も働き続けることが多く、人事異動も少ない。先輩・後輩の序列が明確で、年功序列の空気が残っている病棟もあります。そういう環境では、特定の人が長期間にわたって影響力を持ち続けやすい。

そして、「この病棟ではそういうもの」という空気が形成されると、誰もそれを止められなくなります。上司が黙認し、同僚が見て見ぬふりをする。そうやって、問題が問題として扱われないまま固定化されていく。

もう一つ加えるとすれば、看護師は慢性的な人手不足の現場です。辞められると困る。だから多少問題のあるスタッフでも、なあなあで済まされる。辞めると声を上げる側ではなく、辞めずに我慢し続ける側が「いてくれる人」として扱われ、静かに消耗していく。

つまり、お局問題はその人個人の性格の問題である前に、職場がそれを許してきた構造の問題です。

あなたが「うまく対応できない」のは、あなたのコミュニケーション能力のせいではありません。

職場の人間関係全般で消耗している方は、看護師の職場の人間関係がつらいときもあわせて読んでみてください。


お局にターゲットにされやすい人の特徴

「ターゲットにされるのは自分が悪いから」と思いたくなるとき、少し立ち止まってほしいのです。

お局的な先輩に目をつけられやすいのは、真面目で、反論しない人です。指示に従おうとする。ミスを素直に認める。意見を言っても角が立たないよう言葉を選ぶ。そういう人が選ばれやすい。

逆に言うと、ターゲットにされやすい人は、問題のある人ではなく、むしろ誠実な人であることが多いです。

私の場合は、師長に個人的にターゲットにされていると感じました。

意見を出しても必ず否定される。同じことを他のスタッフがやっても何も言わない。でも自分だけは、人前で大声で叱りつけられる。「男性だから」というわけでもなかったと思います。個人的に、私がターゲットになっていた。在職中からそう感じていました。

最初は「自分が悪いのかな」と考えていました。言い方が悪かったのか、タイミングが悪かったのか、もっとうまく立ち回れば違ったのかと。でも、他のスタッフとの扱いの差があまりにも一貫していて、ある時点から「これは私の問題ではない」と思うようになった。

もし今「なぜ自分だけ」という感覚があるなら、その感覚はたぶん正しいです。
あなたが何かを間違えているから、ではなく、あなたがターゲットとして選ばれているから起きていることです。

なお、言動がエスカレートしていて「これはパワハラかもしれない」と感じている方は、看護師のパワハラ問題も参考にしてみてください。


現場でできる3つの対処法

正直に言うと、お局問題に対する「根本的な解決策」はほぼありません。
できることは主に「自衛」です。それを理解した上で、取れる手段を考えます。

1. 距離をとる(物理的・心理的に)

接触回数を減らすことが、消耗を最小限にする一番現実的な方法です。
業務上必要な関わりだけにする。廊下でばったり会っても、用事がなければ立ち止まらない。何か言われても、その場を早く切り上げる。

心理的な距離のとり方も大切です。「この人の言葉は自分の評価ではない」と意識的に切り離す練習をする。私がやっていたのは、「気にしないようにして、表面上合わせて関わる」というやり方でした。完全には割り切れないけれど、距離を取ろうとすること自体に意味があります。

2. 記録を残す(事実ベースで)

日時、場所、言われたこと、その場にいた人。事実だけをメモしておきます。

「なんとなくつらかった」では後から動きにくい。でも記録があると、相談するときも、退職を決断するときも、自分の感覚を確かめる材料になります。「あのとき確かにああだった」と思い出せるものが手元にあると、自分の感覚を疑わなくて済みます。

フォーマルな記録でなくてよいです。手帳に一行書くだけでも構いません。

3. 味方を見つける(同僚・別部門の上司)

全員が黙認しているように見えても、同じように感じている同僚がいることは多いです。
「あの人きついよね」という会話が一度できると、少し楽になります。

ただ、同僚に愚痴を聞いてもらうことと、組織として動いてもらうことは別です。私は3年間、友達に愚痴をこぼし続けました。それ自体は助けになりましたが、状況は何も変わらなかった。「誰かに話す」は消耗を緩和するためのもの、という位置づけで使うのが現実的だと思います。

組織的に動かしたい場合は、師長より上の管理職や、病院の相談窓口に相談するルートもあります。ただし、それによって状況が悪化するリスクもゼロではないので、記録を残した上で慎重に判断することをおすすめします。


対処しても変わらないときの判断

対処法を試しても、状況が変わらないことはあります。むしろそちらの方が多いかもしれません。

お局的な先輩が自分から変わることはほぼない。周囲や組織が動くことも、残念ながら稀です。

では何が変わり得るかというと、「その人がいなくなる(異動する)」か「自分が動く」かのどちらかです。

私が退職を選んだ一つの理由は、師長がいつ異動になるかわからなかったことです。

在職中、朝、布団から起き上がれない時期がありました。仕事に行きたくない、というより、体が動かない。ストレスが限界になると、そういうことが起きるんだと初めて実感しました。「もう無理だ」というわけでもなく、ただ体が動かない。そんな朝が続いた。

そのときに考えたのは、「いつ状況が変わるかわからないまま、どれだけ待てるか」ということでした。師長の異動時期は読めない。このまま1年待っても、2年待っても、変わらない可能性がある。待つことが自分を消耗させるだけになってきていた。

お局問題がパワハラの水準に達している場合、それを記録した上で退職を選ぶことは、正当な判断です。退職時の引き止めが不安な方は、退職の引き止めに遭ったときの対処法も参考にしてみてください。

環境が変わる見込みがない場合、自分が動くしかない。それは逃げではなく、合理的な判断です。


「相手が勝手に思うこと」と割り切れるか

退職を決めた後、こういう話をする機会がありました。退職代行の話の流れで、「それって逃げてると思われない?」という文脈でした。

そのとき私が思ったのは、「逃げてると思われるけど、それは相手が勝手に思うことであり、自分には関係ない」ということでした。

この考え方は、退職に限った話ではないと思います。

お局に何か言われたとき。意見を否定されたとき。人前で叱られたとき。相手の言動によって自分の価値は変わらない。相手がどう思うかは、相手が勝手に決めることです。相手の評価に自分の感情を預けなくていい。

ただ、「割り切れ」と言うのは簡単すぎます。

私が「それは相手が勝手に思うこと」と思えるようになったのは、3年間悩み続けた後です。3年間、友達に愚痴をこぼして、職場に行くたびに嫌な思いをして、それでも辞めると言い出せなくて、布団から起き上がれなくなって、ようやく「もういい」と思えるようになった。

簡単に割り切れたわけじゃない。十分に悩み切ったから、そう思えるようになったんだと思います。

今すぐ割り切れなくても、それは当然のことです。
まだ悩んでいる段階なら、それはそれで正直な状態です。

転職を検討し始めている方は、看護師の転職タイミングの考え方も読んでみてください。時期の判断基準が整理されています。


自分を守ることを優先していい

2024年8月、私は職場で「仕事を辞めます」と伝えました。

「グダグダいうより端的に言いたいことを伝えるつもりで臨んだ」という気持ちでした。話し合いの場を設定して、最初の一言で「辞めます」と言った。

引き止めがありました。「休んだらどうだ」「異動したらどうか」。でも「辞めることを決めたので」と答えて、一瞬も揺らがなかった。

なぜ揺らがなかったのかを振り返ると、それまでに散々悩んでいたからだと思います。3年間迷い続けて、友達に愚痴をこぼし続けて、布団から起き上がれなくなって、それでもまだ悩んで。そこまで悩んだから、退職を決めた後は揺らがなかった。

退職が通った後、罪悪感はありませんでした。気まずさはありました。でも同時に「ここにいなくていい」という開放感がありました。体が少し軽くなった感覚がありました。

「ここで働くことがしんどい」は、十分な退職理由でした。それ以上の理由は必要なかったと、今は思います。

我慢し続けることが誠実さではないと思います。異動も転職も、逃げではなく自分を守る選択です。

後から聞いた話ですが、退職後にその師長が部下から訴えられて、異動になったことを知りました。在職中に「これはパワハラだ」と感じていた感覚は、間違っていなかった。そのことを知ったとき、「因果応報だな」と思いました。でもそれ以上に、自分の感覚は正しかったんだという安堵の方が大きかったです。

あなたが「おかしい」と感じているなら、それはたいていおかしいのです。


まとめ:自分を守る選択に、遠慮はいらない

お局問題は、あなたのせいではありません。そういう問題が固定化されやすい構造が、その職場にあるのです。

現場でできることはやってみる価値があります。でも対処しても変わらない場合、待ち続けることが自分を消耗させるだけになります。

「ここにいることがしんどい」と感じたとき、それは十分なサインです。

割り切れなくていい。すぐに決断できなくてもいい。ただ、「自分を守ること」を選択肢から外さないでほしいと思います。


辞める選択をした看護師の体験を読んでみたい方は、看護師が辞めることを選んだ話をあわせてどうぞ。「辞めるべきか」の答えは出していませんが、同じように悩んだ人の話が読めます。


あなたにとっての「自分を守る選択」は、何だと思いますか。

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ハロ
看護師歴15年。ICU・外科病棟・精神科身体合併症病棟・地域包括ケア病棟と4科を経験。現在も現役で病棟勤務をしています。 特に精神科身体合併症病棟では12年勤務し、精神疾患を抱えながら身体合併症の治療を要する患者さんと向き合ってきました。看取り、認知症ケア、終末期、急変対応――現場でしか得られないリアルを大切に、自分の体験と感情を正直に書くブログを運営しています。 「正解を教える」のではなく、「同じ目線で一緒に考える」スタンスで、読者の方が少し楽になる文章を目指しています。 【主な発信テーマ】 ・看護師のキャリアと転職 ・精神科看護のリアル ・看護師のメンタルヘルス ・現場で感じた違和感や気づき
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