先輩が怖い。

それだけで、仕事が重くなります。

質問しようとして、声をかけるタイミングを見計らって、でも怖くて、また後にしようと思って。気づいたら聞けなかったまま夜になっている。

そういう日が続いていませんか。

私も1年目のとき、そうでした。ICUに配属されて、先輩が怖くて、フロアにいるだけで体がこわばっていた時期がありました。何かするたびに叱られて、何もしなくても叱られて、「どうすれば正解なんだろう」と毎日考えながら家に帰っていました。

今振り返ると、あのとき自分に「怖くて当然だよ」と言ってあげたかったです。でも当時はそう思えなかった。「自分がもっとできれば怖くないはず」「自分が弱いから怖いと感じるんだ」と、ずっと自分のせいにしていました。

この記事では、「先輩が怖い」という感覚について、私の体験をもとに一緒に考えてみたいと思います。答えを押しつけるつもりはありません。ただ、同じように感じていた人間がここにいる、ということは伝えられると思って書きます。


先輩が怖いと感じるのは自然なこと

看護師の仕事は、間違えれば患者さんの命に関わります。そういう現場で、経験の浅い自分が、何年もの経験を積んだ先輩に評価される。それだけで十分、緊張する環境です。

「怖い」と感じる自分がおかしいわけじゃない。むしろ、その仕事に誠実に向き合っているから怖いんだと思います。適当にこなせている人は、たいして怖くないかもしれない。

ただ、「怖い」にも種類があります。先輩の指導が厳しくて怖いのか、理不尽な態度が怖いのか、何を聞いても怒られそうで全体的に怖いのか。それによって、状況の深刻さも、対処の仕方も変わってきます。

1年目の悩みをもう少し幅広く整理したい方は、新人看護師のつらさについての記事も参考にしていただけるかもしれません。


「怖い」の中身を分けてみる

一口に「先輩が怖い」と言っても、内容は違います。少し分けて考えてみると、自分が今どのくらいしんどい状況にいるのか、整理しやすくなることがあります。

(1) 厳しい指導が怖い

ミスを指摘される、きつい言い方をされる、でも言っていることの内容は正しい。こういうタイプの「怖い」は、仕事を覚えるにつれて少しずつ変わっていくことが多いです。

先輩が厳しいのは、仕事を本気で考えているからという側面もある。「あなたのためを思って言っている」とは言いたくないですが、指導の範囲内に収まっているのであれば、経験を積むにつれて怖さが薄れてくることはあります。

ただ、指導が厳しくても怖くていい。「この先輩は指導の人なんだ」と分かっていても、萎縮するものは萎縮します。それを「慣れればいいだけ」と片付けるつもりはありません。

(2) 理不尽な態度が怖い

内容の正誤に関係なく、怒鳴る、無視する、特定の人だけを責める。こういう場合は、指導とは別の話です。

自分だけ怒られている気がする、機嫌によって対応がまるで変わる、内容より感情でぶつけられている感覚がある。そういう状況は、パワーハラスメントにあたる可能性があります。

「自分が悪い」と思い込まない方がいいケースです。パワハラかもしれないと感じている方は、パワハラについてまとめた記事も読んでみてください。

(3) 何を聞いても怒られそうで怖い

質問できない、報告のタイミングが分からない、先輩の前に立つだけで緊張する。これは先輩個人の問題というより、委縮が全体に広がっている状態です。

一度「怒られた」「冷たくされた」という体験があると、次から声をかけること自体が怖くなる。怖くて聞けなくて、分からないまま動いて、またミスをして怒られる。そういう悪循環に入っていることがあります。

自分が今どのタイプか、少し考えてみてください。混合していても構いません。


質問できないときの対処法

「聞けない自分が悪い」と思いがちですが、聞けない状況を作っているのは、先輩の態度や職場の雰囲気であることも多い。自分だけを責めなくていいです。

いくつか、試しやすいことをあげます。

メモに書いておいて、まとめて聞く

「今この瞬間に聞く」が怖いなら、気になることをメモしておいて、落ち着いたタイミングでまとめて聞く方法があります。「先ほど〇〇の処置をしたときに、一つ確認させてください」という形にすると、聞きやすくなることがあります。「聞けなかった」ではなく、「準備してから聞く」に変えるだけで、少し気持ちが楽になる場合もあります。

別の先輩に聞く

怖い先輩が一人いるとして、病棟の全員が怖いわけじゃないことも多い。声をかけやすそうな先輩、話しかけても怒らない先輩を見つけておくと、少し楽になります。「あの先輩に聞かなければいけない」という縛りをはずすだけで、動きやすくなることがあります。

タイミングを選ぶ

忙しい時間帯、処置の直前直後、先輩が明らかに余裕のない顔をしているとき。そういうタイミングで聞くと、当然ながらいい反応は返ってきにくい。少し落ち着いたタイミングを待つことも、一つの選択肢です。

「聞けなかった自分」を責める前に、「聞ける環境じゃなかった」という視点も持っておいてほしいと思います。あなたが弱いのではなく、聞きにくい空気を作っている側に原因があることも多い。


先輩の怖さは、時間で変わることもある

1年目のとき、私はICUにいました。

先輩によって言うことが違いました。Aさんはこうしろという。Bさんはああしろという。AさんのやりかたでBさんに怒られる。BさんのやりかたでAさんに怒られる。どちらに合わせても何かしら言われる状態が続いていました。

そのうち、「がんばっても怒られる」という感覚になっていきました。何をやっても怒られると思うと、周りが全部怖くなる。仕事に取り組む前から委縮していて、そのせいでまたミスが増えて、またやられる。

「辞めたい」と毎日思っていました。看護師に向いていないんじゃないかと思っていました。

2年目に精神科へ異動しました。そこで気づいたのは、「辞めたい」という気持ちが消えていたことです。精神科の仕事が向いていた、という部分もあったかもしれない。でも一番大きかったのは、人間関係が変わったことだと思います。怖い先輩のいる場所にいなくなっただけで、こんなに違うのかと正直驚きました。「先輩が怖い」のは、自分の能力のせいだけじゃなかったんだと、異動して初めて気づきました。

3年目になると、仕事をある程度覚えて、自分の判断で動ける場面が増えました。そうすると、先輩との関係も少し変わりました。できない自分を見られる機会が減ると、緊張も少しずつやわらいでいきました。

時間と経験が、「怖い」を変えることはあります。

ただ、すべての怖さが時間で変わるわけではないということも、経験上分かっています。

お局と呼ばれるような、何年経っても態度が変わらない先輩への対処は、正直なところ「気にしないようにして、表面上合わせていた」というのが私の答えです。真正面からぶつかっても変わらない相手はいる。変わらないということが分かったとき、「どう関わるか」より「いかに消耗しないか」を考えるようになりました。

人の悪口ばかり言っている先輩、口だけ動いて仕事をしない先輩。そういう人に好かれようとすると、自分が疲弊します。表面上合わせることが正解かどうかは今もわからないですが、自分を守るための選択でした。

お局先輩のことについては、別の記事でもう少し詳しく書いています


どうしても怖くて仕事にならないなら

「時間で変わる」では終わらないケースがあります。

以前の職場で、病棟の上司との関係が壊れていった時期がありました。

意見を出すたびに否定されました。他のスタッフには同じことをしないのに、自分だけ人前で大声で叱られることがありました。「個人的にターゲットにされている」という感覚がありました。

その上司がいつ異動になるか分からない。つらい状態がいつまで続くか、先が見えない。「ここで働くことがしんどい」という気持ちが、じわじわと積み重なっていきました。

朝、布団から起きられなくなった時期があります。体が仕事に行くことを拒否していた。それでも「もう少し頑張れば変わるかもしれない」「次の配置転換を待てばいい」と思いながら、3年間その職場にいました。

辞められなかった理由は、「次の職場でやっていける自信がなかった」から。友人に愚痴を漏らしながら、「辞めたい」と言いながら、でも動けなかった。今思えば、辞めたいと言いたかっただけなのかもしれない。たまっていたものを吐き出すことが、その頃の自分にとっての限界管理だったように思います。

ある日、「もう限界だ」という気持ちが固まりました。そこから先は揺らがなかった。「仕事を辞めます」と端的に伝えて、引き止めに遭っても「辞めることを決めたので」と言い続けました。3年間十分に悩んでいたので、切り出したときに一秒も迷わなかった。

退職後の一番の変化は、その上司との関係に悩まなくなったことです。それだけで、どれだけ楽になったか。職場を変えただけで消えるものが、あれほど自分を苦しめていたんだと、後になって気づきました。

後から知ったのですが、その上司はパワーハラスメントで問題になって異動したそうです。「自分の感覚は間違っていなかったんだ」と思いました。

環境を変えることは、逃げじゃない。自分を守る選択だと、今は思えます。

人間関係のつらさをもう少し広く考えたい方は、看護師の人間関係のつらさについての記事も参考にしてください。


「辞めたい」と思う自分を責めないでほしい

先輩が怖くて辞めたいと思っている方に、一つだけ伝えさせてください。

自分の気持ちを大切にしてほしい。

「先輩が怖い」は、多くの場合、時間で変わります。仕事を覚えて、関係が変わって、怖さが薄れていく。そういうことは実際にあります。異動先の環境で、同じ自分でも「怖い」がなくなることもある。

でも、変わらないこともある。朝起きられなくなるくらい追い詰められたら、それは「もう少し頑張れば変わる」じゃなくて、「今すぐ距離を取る」サインかもしれない。しんどさの総量に、自分が一番敏感でいてほしい。

また、怖さの中身によっても話は変わります。厳しい指導なのか、理不尽な扱いなのか。そこが違えば、対処も違う。「先輩が怖い」をひとまとめにしないで、自分にとっての「怖い」が何なのかを、少しだけ分けて考えてみてほしいと思います。

友人に話すだけで、気持ちが切り替わることもあります。私もずっとそれで乗り越えていました。誰かに話せる相手がいるなら、まずそこから。

もし今限界に近いと感じているなら、環境を変えた体験をまとめた記事も読んでみてください。「転職しなければいけない」という話ではなく、「同じように悩んだ人間がいる」という話として。

先輩が怖い。その気持ちは、間違っていません。


あなたは今、どんな「怖い」の中にいますか。

ABOUT ME
ハロ
看護師歴15年。ICU・外科病棟・精神科身体合併症病棟・地域包括ケア病棟と4科を経験。現在も現役で病棟勤務をしています。 特に精神科身体合併症病棟では12年勤務し、精神疾患を抱えながら身体合併症の治療を要する患者さんと向き合ってきました。看取り、認知症ケア、終末期、急変対応――現場でしか得られないリアルを大切に、自分の体験と感情を正直に書くブログを運営しています。 「正解を教える」のではなく、「同じ目線で一緒に考える」スタンスで、読者の方が少し楽になる文章を目指しています。 【主な発信テーマ】 ・看護師のキャリアと転職 ・精神科看護のリアル ・看護師のメンタルヘルス ・現場で感じた違和感や気づき
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