看護師のパワハラ体験談。師長に3年間ターゲットにされた話
師長が変わった。それだけで、職場がこんなにも変わるんだと思いました。
最初は「相性が合わないだけかな」と思っていました。でも時間が経つにつれて、これはそういう問題じゃないんだと気づくようになっていった。
意見を出しても必ず否定される。人前で自分だけが大声で叱りつけられる。「なんでこうなるんだろう」と考えるたびに、どこかで「自分に問題があるのかもしれない」という考えが頭をよぎっていました。
3年間、そんな状況が続きました。
師長にターゲットにされた
その師長は、別の病棟から異動してきた方でした。着任してしばらくすると、自分への扱いが変わっていった気がしていました。
意見を出しても、必ず否定される。他のスタッフが同じようなことを言っても普通に通るのに、自分が言うと「それは違う」「なぜそう思うの」と返ってくる。
カンファレンスや申し送りの場で、自分だけが大声で叱りつけられることもありました。他のスタッフがいる前で。「怒られているのは自分だけだ」という感覚は、じわじわと積み重なっていきました。
個人的にターゲットにされている、という感覚があったのは確かです。ただ、その当時は「そう感じているだけかもしれない」「自分の勘違いかもしれない」という思いもあって、自分の感覚を信じきれなかった。
「これはパワハラなのか」と思っていた
在職中は判断がつかなかった
渦中にいると、それが「パワハラ」なのかどうかが、わからなくなるものだと思います。
「こんなに叱られているということは、自分に問題があるのかもしれない」「他のスタッフはうまくやっているんだから、自分のやり方が悪いのかもしれない」。そういう考えが浮かんでは、判断を鈍らせていました。
退職してから後で聞いた話ですが、その師長は結局、複数の人から訴えられて異動になったそうです。「そうか、自分だけじゃなかったんだ」と思った記憶があります。在職中にはわからなかったことが、あとから見えてくることもある。
パワハラに該当する行為の例
自分の状況が「パワハラに当たるのかどうか」を確認するための参考として、厚生労働省が示しているパワハラの定義を簡単に紹介しておきます。
パワハラは以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。
- 優越的な関係を背景にした言動(立場・権限を使っている)
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
- 就業環境を害する(精神的に追い詰められるなど)
具体的な行為としては、以下の6類型が挙げられています。
- 身体的な攻撃(暴力・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・侮辱・暴言)
- 人間関係の切り離し(隔離・無視)
- 過大な要求(達成不可能な業務の強制)
- 過小な要求(能力・経験に見合わない業務への格下げ)
- 個の侵害(私的なことへの過剰な立ち入り)
人前での繰り返す叱責、特定の人だけを標的にした否定——自分が受けていたことを、この基準に照らしてみると、「当てはまる」と感じる部分があるかもしれません。渦中では判断しにくいものですが、こうした基準を知っておくことは、自分の状況を客観的に見るための手がかりになります。
3年間辞めたいと思いながら続けた理由
3年間、ずっと「辞めたい」と思っていました。
でも、実際には辞めなかった。なぜだったか、今振り返ると、「次の職場でうまくやれる自信がなかった」というのが一番大きかったと思います。
「師長が苦手なのか、自分が看護師に向いていないのか、どっちかわからない」という感覚もありました。今の職場を出たとして、また同じことになったらどうしよう、という不安です。
友達に愚痴を漏らすことはよくありました。職場のこと、師長のこと、しんどいということ。でも今思うと、「辞めたいと言いたいだけだったのかもしれない」という気持ちもあって。言葉にして吐き出すことで、どうにか続けていた部分があったのかもしれません。
辞められなかった理由は、人によってさまざまだと思います。「辞めたいのに辞められない」という感覚を抱えている方は、看護師を辞めたいけど辞められない理由と、そこから一歩踏み出すヒントにも書いています。もし「辞めたいのに言い出せない」という気持ちが重なるようなら、看護師を辞めたいのに言えないもあわせてどうぞ。
「理解してくれる人がいた」から続けられた
3年間続けられたのは、自分だけの力ではなかったと思っています。
職場に、理解してくれる人がいました。
特別なことをしてくれたわけではありません。師長に抗議してくれたとか、かばってくれたとか、そういうことではなくて、いつも気にかけてくれた、という存在でした。
「大丈夫?」と声をかけてくれる。ただそれだけのことが、少しの支えになっていました。
完全に孤立していたわけではなかった。だからまだ働けた——という感覚は、今もはっきりと覚えています。
ただ、正直に言うと、その人がいなかったら3年は持たなかったかもしれない。これは自分の力というより、そういう人がたまたまそこにいてくれた、という話でもあります。環境や偶然に助けられていた部分は確かにありました。
看護師の職場の人間関係がつらいときにも書きましたが、人間関係の問題は、一人で抱えると消耗するのが早い。
限界がきたとき
ある朝、布団から起きられなくなりました。
別に、何か特別なことがあったわけではないと思います。ただ、体が動かなかった。「今日も行かなきゃ」と頭ではわかっているのに、起き上がれない。
そのとき、「ああ、限界なんだな」とはっきり思いました。
辞めようと決めたのは、そのあとすぐのことでした。師長に「仕事を辞めます」と、最初の一言目にそのまま言いました。
退職を伝えてから、引き止めはありました。ただ、自分の中ではもう決まっていた。退職の引き止めへの対処については別の記事に書いているので、もし必要な方はそちらも読んでみてください。
辞めてよかったと思う
退職して、今は別の職場で働いています。
辞めてよかったと思っています。
「もっと早く辞めればよかった」とか「3年続けたことが正解だった」とか、そういう評価をしたい気持ちは今もあまりありません。ただ、「辞めてよかった」という気持ちは、わりとはっきりあります。
3年間のことが完全に解決したかというと、そういうわけでもない。転職後の職場にも、それなりに慣れるまで時間がかかりましたし、働くことの難しさがなくなったわけでもない。
ただ、朝布団から起きられない、という状態ではなくなりました。それだけで十分だとも思っています。
パワハラを受けているあなたへ
相談先を知っておく
「自分はどうしたらいいんだろう」と思ったとき、選択肢を知っておくだけでも、少し違うかもしれません。
主な相談先として、以下のような窓口があります。
院内
– 看護部長・副看護部長への相談
– 人事部門・ハラスメント相談窓口(設置している病院の場合)
院外
– 都道府県労働局 総合労働相談コーナー(無料・予約不要)
– 法テラス(弁護士費用の立替制度あり)
– 厚生労働省「みんなの人権110番」(0570-003-110)
今すぐ使う必要はないと思います。ただ、「こういう場所があるんだ」と知っておくだけでも、追い詰められたときの逃げ道になることがあります。
看護師の退職代行を使う選択肢についても、一つの手段として知っておいて損はないと思っています。
自分を責めないでほしい
パワハラの渦中にいると、「自分に問題があるんじゃないか」という考えが浮かびやすくなります。自分もそうでした。
でも今振り返ると、「自分だけがターゲットにされていた」という状況は、自分のせいではなかった。あの師長は、自分だけでなく他の人にも同じことをしていて、退職後に訴えられた。
それを知ったとき、「やっぱり自分の問題じゃなかったんだ」とは思いましたが、同時に「なぜあのときそれがわからなかったんだろう」とも思いました。渦中にいると、本当に判断がつきにくいものです。
「自分が悪い」と思いやすい状況にいるからといって、本当に自分が悪いとは限らない。そのことは、頭の片隅に置いておいてほしいと思っています。
看護師のお局問題や看護師のいじめと似た状況に感じる方もいるかもしれません。ただ、師長から受けるパワハラは、立場の差があるぶん逃げにくい。それも確かなことです。
もしいつか、「状況を変えたい」と思ったとき、転職や環境を変える選択肢も一つです。自分の体験をまとめた看護師を辞めた体験談も、何かの参考になればと思って書きました。
今、しんどい状況にいる人が、このページを読んで「自分だけじゃないんだな」と少しでも思えたなら、書いてよかったと思います。
よくある質問
パワハラの証拠はどうやって残せばいいですか?
一般的には、日時・場所・内容・目撃者をメモとして記録しておくことが有効だとされています。メールやLINEなどのやり取りがあれば保存しておくのもよいでしょう。録音については法的にグレーな部分があるため、録音を証拠として使いたい場合は、事前に弁護士や労働局に確認してみるとよいかもしれません。
ただ、自分自身は在職中に記録を残せていませんでした。「記録を残そう」と思える余裕がなかったというのが正直なところです。記録を残すことが大切なのはわかっていても、毎日の業務をこなしながらそこまで気が回らない、というのが現実だったと思います。
証拠を残すことができなかったとしても、それがその状況の深刻さを物語っている、という見方もできるかもしれません。
師長のパワハラは誰に相談すればいいですか?
院内であれば看護部長・人事部門のハラスメント窓口、院外であれば都道府県労働局の総合労働相談コーナーや法テラスが選択肢になります。信頼できる同僚に話してみることも、一つの方法です。
ただ、自分は院内の窓口や外部機関には相談しませんでした。友達に話して気持ちを整理することで、どうにか続けていた、という感じでした。
「公式の窓口に相談する」というのは、ある程度エネルギーが要ることだと思います。まず誰かに話す、友達でも、信頼できる同僚でも——それだけでも、少し楽になることがあります。一歩ずつで構わないと思っています。