看護師のいじめは構造の問題。自分を責めなくていい
「これっていじめなのかな」と迷っているあなたへ
同じ職場で、特定の人からだけ厳しい対応をされる。無視されるわけでもないけれど、なんとなく自分だけ違う扱いを受けている気がする。こういうとき「私が気にしすぎなのかな」と思ってしまいがちです。
「いじめ」という言葉は重く感じるから、なかなか使えない。それでも、何かがおかしいと感じている。その感覚は、おそらく正しいと思います。
「おかしい」と感じた時点で、すでに何かが起きています。明確な線引きがなくても、自分がつらいならそれで十分です。この記事は、その「迷っている状態」のまま読んでもらえる前提で書いています。
看護師の職場で起きやすいいじめの形
職場でのいじめは、ドラマのような分かりやすい形をしていないことが多いです。気づいたときには「もうずっとこういう状態だった」という感じで、積み重なっている。
よく聞かれる形をいくつか並べます。自分の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
- 特定の人にだけ厳しい対応が続く ミスをしても全員が同じように注意されるわけではなく、自分だけが何度も繰り返し指摘される
- 人前での叱責 カンファレンス中やナースステーションで、他のスタッフがいる前で強い言葉で叱られる
- 無視・仲間外れ 挨拶を返してもらえない、業務連絡が自分だけ回ってこない
- 仕事を教えない・情報を回さない 新しい手順の共有から外される、必要な引き継ぎを受けていない
- 陰口 自分がいない場所で悪口を言われていると他のスタッフから聞いた
全部当てはまらなくてもいいです。「一つか二つ心当たりがある」という状況でも、軽く流さなくていいと思います。
「いじめ」と「パワハラ」の境界線が気になる方は、看護師のパワハラについての記事も参考になるかと思います。
いじめは「あなたが悪い」のではなく、構造の問題
私が働いていた病棟に、特定のスタッフに対してひどい対応をする師長がいました。
最初は「自分が何か悪いことをしたのかな」と考えていました。何を直せばこの対応が変わるのか、ずっと頭の中で考えていた気がします。
でも、あるとき気づいたんです。その師長は、後輩に対しても同等のことをしていた。
これは大事なことだと思っています。ターゲットが変わっているということは、問題は「ターゲットにされた人」にあるのではなく、「そういう行動を繰り返す人」の側にある。加えて、それを許している職場の構造にある。
自分だけへの攻撃ではなく、複数の人に向けられていた。それを知ったとき、少しだけ自分を責めることが減りました。「私が弱いからこうなった」ではなかった、と思えた。
職場でのいじめは多くの場合、閉鎖的な環境のなかで起きます。誰も止めない、誰も介入しない、その空気が続くことで成立してしまう。個人の性格の問題だけで語れるものではないと思っています。
看護師の職場環境が全体的につらいと感じている方は、職場の人間関係全般についてはこちらも読んでみてください。
孤立しないこと。それだけで少し持ちこたえられる
いじめのなかで一番しんどいのは、孤立することだと思います。「この職場で自分だけが変だ」「誰もわかってくれない」という感覚が重なっていくと、判断力も削られていく。
後輩がその師長にやられているのを見たとき、私は直接師長に抗議するとか、看護部に相談するとか、そういう行動を取りませんでした。取れなかった、という方が正確かもしれない。
かわりに、後輩の子とは仲良くした。同じ痛みがわかる人間として。
それだけのことです。解決ではなかった。でも、「あなたのことが見えている人がここにいる」という状態を作ることならできた。
完全な解決策がなくても、「わかってくれる人がそばにいる」だけで、少しだけ持ちこたえられることがあります。もし今、職場の中に話せそうな人が一人でもいるなら、まずそこから関係を作っていくことを考えてみてもいいかもしれません。
相談先を知っておくこと
「誰かに話したい」と思ったときのために、選択肢を書いておきます。
- 信頼できる同僚 職場内で唯一話せる人がいるなら、その関係は大切にしたほうがいいです。ただし、相手を巻き込みすぎることには注意が必要です
- 看護部長・人事部門 直属の師長が加害者である場合、その上にあたる立場に相談する選択肢があります。ただし、職場の規模や雰囲気によって動き方は大きく変わります
- 外部相談窓口 労働基準監督署の「総合労働相談コーナー」では、職場でのハラスメントに関する相談を受け付けています。職場に知られずに相談できます
- 記録を残す いつ、どこで、何があったかを日付とともにメモしておくと、後で相談するときに役立ちます。メモは職場のパソコンではなく、個人のスマートフォンや手帳に残しておくと安心です
お局問題に近いと感じている方は、看護師のお局問題の対処法に詳しく書いています。
異動や転職は「逃げ」ではない。でも、万能でもない
あの後輩は、他の病棟に異動になりました。
それが「解決」だったかどうか、正直わかりません。その師長のいる病棟からは離れられた。でも、師長自身が変わったわけでもなく、問題の構造が解消されたわけでもなかった。「逃げ場」ができた、というのが近い言い方だと思います。
私自身も最終的に転職を選びました。師長からのストレスという意味では、確かに楽になりました。ただ、転職先で別の問題がないかといえば、そんなことはなかった。環境が変わることで解決するものと、変わらないものがある。
でも、それでも。今の場所にいられないと思うなら、動いていいと思います。「逃げ」かどうかより、「今どこにいたいか」の方が大事なことだと、今は思っています。
退職を伝えるときの引き止め対応が不安な方は、看護師の退職の引き止め対処法を参考にしてみてください。また、どうしても自分で伝えられない状況なら、退職代行という選択肢もあります。
いじめを「解決」できなくても、自分を責めないでほしい
職場でのいじめは、個人の努力で解決できる問題ばかりではありません。
加害者が変わることを待ち続けるのは消耗します。職場全体の構造が変わるのを期待し続けるのも、限界があります。
「解決できなかった自分がいけなかった」とは、思わなくていいと思います。解決しなかった原因は、あなたの努力が足りなかったからではないことの方が多い。
私もいじめを「解決」したわけじゃない。後輩と仲良くしたことは、誰かの傷を完全に治したわけでもない。転職で逃げた部分もある。それでも、今は少しだけ楽になっています。
もし今、つらい状況の中にいて「辞めたい」という気持ちが浮かんでいるなら、同じように悩んだ経験を書いた記事があります。看護師を辞めたいと思ったときの体験談を読んでみてください。判断を急がなくていいし、答えを出さなくてもいい。ただ、一人で抱えすぎないでほしいと思っています。
あなたはどんなふうに、今の状況を感じていますか。