看護師が給料を上げる方法。現実的な選択肢を整理する
給料を上げたい、と思うのは当然のことだと思います。
夜勤明けに給与明細を開いて、しばらく画面を見つめたまま何も言えなかった、という経験があります。「これだけ、か」という言葉がぼんやりと浮かんで、でも何に対して言いたいのかもよくわからないまま、ため息をついて閉じました。
悲しいというより、力が抜けるような感覚でした。
看護師として15年ほど働いてきた私の場合、年収は500万円を少し超えるくらい。手取りでいうと月25万円前後です。1年目のころと比べれば確かに増えています。旅行に行けるようになったし、少し良いものを食べられるようにもなりました。でも、夜勤手当や残業手当を除いた基本給だけで見ると、思ったよりずっと少ない。命に関わる判断をして、精神的にもすり減る仕事に対して「見合っているんだろうか」という気持ちは、正直消えません。
この記事では、「給料を上げるにはどうすればいいのか」という問いに対して、私が実際に検討したり実行したりしてきた選択肢を整理してみます。正解を示せるわけではありませんが、同じように悩んでいる方のヒントになれば、と思って書いています。
看護師の給料は、組織の中では大きく変わらない
まず現実として知っておきたいのは、病院に勤める看護師の給与は、構造的に上がりにくいということです。
看護師の給与は基本給+手当(夜勤手当・残業手当・資格手当など)で構成されています。勤続年数が増えれば基本給は少しずつ上がりますが、そのベースアップ幅はかなり小さい。結果として、給与を増やすには夜勤を増やすか残業をするか、という状況になりやすいのが実態です。
私の場合も、15年目で年収500万円台というのはそういう構造の結果です。夜勤手当が1回5,000円前後で、それが月に何本あるかで月収がかなり変わります。逆に言うと、夜勤を減らしたい・残業を減らしたいという希望を持ちながら年収を維持しようとすると、かなり難しい。
「1年目と比べると増えた」のは事実ですが、「10年後もこのペースで増え続けるか」というと、そうはいかない。ある程度のところで頭打ちになる。これが組織の中での年収の現実だと感じています。
看護師の年収のリアルについては、別記事でより詳しく書いています。あわせて読んでいただけると、全体像が見えやすくなると思います。
→ 看護師の給料が低いと感じる理由。現実と向き合い方を整理する
資格を取れば上がるのか
「認定看護師を取れば給料が上がる」という話を聞いて、検討したことがあります。
認定看護師や専門看護師の資格を取得すると、多くの病院では資格手当がつきます。ただ、その金額は月3,000〜5,000円程度というところが多いのが現実です。
私が検討をやめた理由は、費用対効果でした。認定看護師の資格を取るには、研修機関での半年〜1年の研修が必要で、その期間は現場を離れることになります。費用も数十万円かかることがあります。研修後に職場に戻れるかどうか、戻った後に手当がどれくらいつくか、それらを考えたとき、「年収を上げる手段」としては見合わないと判断しました。
ただ、ひとつ言いたいのは、「資格を取るな」ということではありません。看護の専門性を深めたい、患者さんにより良いケアをしたい、という動機があるなら、資格には十分な価値があります。問題は、「年収のために取る」という目的設定です。その目的で取るのであれば、費用と手間に対してリターンが小さすぎる、という話です。
出世すれば上がるのか
師長や主任になれば、給与は上がります。これは事実です。
ただ、管理職になるということは、現場の看護業務から離れて、スタッフ管理・シフト作成・書類仕事・委員会対応などが主な業務になるということでもあります。
私にとって、これは「合わない選択」でした。
「年収のために、やりたくないことを続けることが正解かどうか。私にとっては合わない選択でした」というのが、今の正直な気持ちです。管理業務そのものを否定しているわけではなく、自分の向き不向きと照らしたとき、そうじゃないと思った、ということです。
出世が合う人は、ためらわずに目指してほしいと思います。でも、「給料のためだけに管理職になる」のは、かなりしんどい道だと思います。給与が上がっても、やりたくない仕事でそれを得続けることが、長期的に自分にとって良いかどうかは、一度立ち止まって考えてほしいことです。
転職で上がるのか
転職で年収が大きく上がるケースはあります。特に、急性期病院から給与水準の高いクリニックや健診センターへ移るパターン、また地域によっては病院間の給与差が大きいケースもあります。
ただ、私の場合は転職しても年収はほぼ変わりませんでした。
36歳、看護師14年目のときに転職しました。正直に言うと、転職前は「収入面は下げたくなかった」という気持ちがありました。だから同程度の年収が確保できそうな職場を選んだのですが、結果として大きくは上がらなかった。
でも、得たものはありました。通勤が楽になり、残業も減りました。「転職を通じて得たのは、年収ではなく『消耗が減った分の余白』」というのが、今振り返ったときの正直な感想です。
転職でどれくらい年収が変わるかは、転職先・タイミング・経験によって大きく違います。「転職すれば上がる」とも「上がらない」とも一概には言えません。年収アップを転職の主な目的にするなら、転職先の給与体系をきちんと確認することが重要です。
転職のタイミングの考え方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
クリニックへの転職と年収の関係については、こちらも読んでもらえると参考になると思います。
→ 看護師がクリニックに転職するとき。年収と働き方の変化を整理する
副業・自分のビジネスという選択肢
「組織から給料をもらうだけの立場ではなく、自分の力でお金を稼げるようになりたい」という気持ちが、ある時期から強くなりました。
資格を取っても大きく変わらない、出世は合わない、転職しても劇的には変わらない——そういった現実を一つひとつ考えていくなかで、「組織の枠の外で稼ぐ手段を持つことが必要なんじゃないか」と感じるようになったのです。
そのひとつの選択肢として、私はブログを始めました。看護師としての経験や視点を記事にして、広告収益やアフィリエイト収益を得る仕組みです。
ただ、ここで正直に言わなければいけないのは、副業はすぐに結果が出るものではないということです。ブログを始めてから収益が安定するまでには、かなりの時間がかかります。私の場合もまだ道の途中で、焦らず続けるしかないと思っています。
副業の選択肢は他にもあります。Webライター、看護師向けセミナーの講師、訪問看護師としての非常勤掛け持ち、など。いずれにせよ、「すぐに年収が上がる手段」ではなく、「時間をかけて育てる選択肢」として考えるのが現実的です。
「給料を上げる」よりも大事だったこと
転職後、一番大きかった変化は何かと聞かれると、「前の職場での人間関係の消耗から解放されたこと」と答えます。
特定の師長との折り合いが悪く、それがずっと重荷になっていました。年収は変わらなかったけれど、その重さがなくなったことで、気持ちが違いました。純粋に開放感がありました。
「消耗が減った分の余白」というのは、お金に換算しにくいものです。でも、私にとってはその余白が一番の収穫でした。通勤が楽になって、残業が減って、精神的な余裕が生まれて、自分のことを考える時間が増えた。その積み重ねが、今のブログを続けることにもつながっています。
給料を上げることは、もちろん大事な目標です。でも「給料を上げること」だけを指標にして選択すると、それ以外の大事なものを見落とすことがある。私はそれを転職を通じて学んだ気がしています。
まとめ
看護師が給料を上げる主な選択肢を整理すると、以下のようになります。
- 資格取得: 看護の専門性を深める動機があるなら価値がある。年収目的だけでは費用対効果が合いにくい
- 出世(管理職): 給与は上がるが、管理業務への向き不向きを考える必要がある
- 転職: 転職先によっては上がるが、確実ではない。給与以外の条件も含めて見ることが重要
- 副業・自分のビジネス: 可能性はあるが、即効性はない。時間をかけて育てる覚悟が必要
どれが正解かは、自分にとって何が大事かによって変わります。
年収の数字を上げることが目的なら、条件の良い転職先を探すことが最も現実的なアプローチの一つです。もし転職を考えているなら、一人で抱え込まず、転職サービスを活用して情報を集めてみることをおすすめします。
→ 看護師転職サイトのおすすめ比較。実際に使ってみた視点で整理する
でも、年収が上がらなくても「消耗が減った余白」で豊かになることもある。給料の話をしながらも、最終的には「自分にとって何が豊かさか」という問いに戻ってくる気がします。
あなたにとっての豊かさは、どんな形をしていますか。