TKA(人工膝関節置換術)術後の看護|後出血と循環・神経障害の観察ポイント
TKA(人工膝関節置換術)の術後を担当する看護師さんへ。
「どんな手術なのか」「術後に何を観察すべきか」――これらを知らずに患者を受け持つと、医原性の合併症を見逃すリスクがあります。
この記事では、看護師歴15年の現役ナースが、TKAの基礎と術後観察のポイントを2つに絞って整理します。記事の最後には、私が現場で経験した「医原性合併症」の話と、よくある質問への回答も載せています。
※注意:この記事は看護師の臨床知識として記載していますが、患者個別の症状や治療方針については主治医・担当医の指示に従ってください。患者の急変時は速やかに医師に報告し、医師の指示のもと対応してください。
TKA(人工膝関節置換術)とは
TKAとは Total Knee Arthroplasty の略で、日本語では「人工膝関節置換術」と呼びます。
変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した膝関節に対して行われる手術で、損傷した膝関節部位を取り除き、代わりに人工膝関節を埋め込みます。手術によって、術前に感じていた痛みが解消され、歩行障害が改善することを目指します。
高齢化に伴い件数が増えている整形外科手術のひとつで、整形外科病棟ではよく担当する手術です。
TKA術後で必ず押さえる2つの観察ポイント
TKA術後で、看護師が必ず押さえておくべき観察ポイントは以下の2つです。
- 後出血(ドレーン管理)
- 循環・神経障害(膝装具による合併症)
どちらも見逃すと重大な後遺症につながる可能性があるため、この記事では1つずつ詳しく解説します。
① 後出血の観察ポイント(ドレーン管理)
術後、思いがけない多量の出血が起こる場合があります。後出血が起こっていないか、ドレーンからの排液量を経時的に観察する必要があります。
ドレーンからの排液量が急激に増えた場合
- 目安として、ドレーンからの排液量が 100ml/時以上 ある場合、すぐに医師に報告し対応が必要です。
- 血圧低下・出血性ショック状態に注意し、バイタルサイン測定と全身状態の観察を行います。
ドレーンからの排液量が急激に減った場合
- 急にドレーンからの排液量が減った場合、チューブ内の閉塞、もしくは陰圧がかかっていない可能性があります。
- ドレーン刺入部からバックまでのチューブを点検し、チューブの屈曲やチューブ内の凝血塊による閉塞がないか確認し、ミルキングを行います。
- ドレーンバック内が陰圧か、ドレーンバックの管理手順に沿って確認しましょう。バック内の排液が満タン・多くなている場合、正しく陰圧がかからないことがあります。
② 循環・神経障害の観察ポイント(膝装具による合併症)
術後、膝装具(ニーブレス)を装着し膝関節を固定し、患肢の腫脹や浮腫を軽減する目的で患肢をクッションで挙上します。
この膝装具による膝関節固定が原因で、循環・神経障害が起こる場合があります。
循環・神経障害の観察項目
- 足先の冷感・皮膚色
- 知覚障害の有無(しびれ・触覚低下)
- 運動障害の有無(足先の動きが鈍い・動かない)
- DVT(深部静脈血栓症)の発生の有無 ─ 患肢の安静が長いので発生に注意
母指の知覚鈍麻、足先の底屈・背屈運動に障害が起これば腓骨神経麻痺の可能性があります。すぐに医師に報告が必要です。
循環・神経障害の多くは「医原性」── 看護師として知っておくべき話
TKA術後で特に伝えたいのは、循環・神経障害の多くが医原性であるという事実です。
つまり、自分の看護が正しく行えば防げるものであり、障害が起これば「正しく看護ができていなかった」ことを意味します。
過去に私の病棟では、下肢の手術を受けた患者が術後に腓骨神経麻痺を起こし、術後管理が正しくできていたのかと医師から注意を受けたことがあります。
一度障害が起こると、回復に時間がかかります。最悪の場合、後遺症として麻痺が残ります。
このようなことを起こさないために、正しい看護知識・技術を身につけ実践することが、看護師としての責任です。膝装具の装着位置、患肢の挙上の角度、定期的な観察――どれも基礎的なことですが、それを忠実に行うことが医原性合併症の予防につながります。
TKA術後看護でおすすめの参考書
整形外科で働く看護師なら、現場ですぐ確認できる参考書を1冊持っておくと心強いです。私自身、わからないことや「ど忘れ」したときに、その場でちらっと開いて確認・復習しています。
この本は疾患や骨折部位ごとに治療方法・患肢の固定法・日常生活動作の注意点・指導方法が説明されており、写真がたくさん使われていてとても見やすい構成です。
「わからないことをわからないまま放置する」のは、看護師として一番怖いこと。すぐに調べて確認できる環境を作っておくと、自分の看護にも自信が持てるようになります。
TKA術後看護でよくある質問
Q. ドレーンからの排液量はどれくらいから医師に報告すべきですか?
A. 一般的な目安として「100ml/時以上」が継続する場合は速やかに医師に報告してください。ただし、患者の状態(バイタルサイン・全身状態)によって判断は変わります。少量でも血圧低下やショック症状を伴う場合は即報告が必要です。施設や術者の方針によっても基準が異なるため、所属病棟のマニュアルを必ず確認してください。
Q. 腓骨神経麻痺を予防するために特に気をつけることは?
A. 膝装具(ニーブレス)の装着位置と圧迫の有無を定期的に確認することです。腓骨神経は膝の外側を走っており、装具の縁が腓骨頭部分に当たって圧迫されると麻痺が起こりやすくなります。装着時に「装具が膝の正しい位置にあるか」「皮膚に過度な圧迫痕がないか」を観察してください。患肢挙上時のクッションの位置も同様に注意が必要です。
Q. 術後にDVT(深部静脈血栓症)の予防として何をすればいいですか?
A. 術後早期からの足関節運動(底屈・背屈の自動運動)、弾性ストッキングの着用、フットポンプの使用が基本です。患者ご自身の協力が必要なので、入院時から「術後にこういう運動をしてもらいます」と説明しておくとスムーズです。詳細な術後リハビリのプロトコルは、医師・理学療法士の指示に従ってください。
Q. ニーブレスの装着時間はどれくらいが目安ですか?
A. 装着時間や離脱のタイミングは、術式や術者の方針によって異なります。一般的には術後数日〜術後リハビリ進行中まで装着を継続することが多いですが、必ず主治医・担当医の指示に従ってください。看護師としては「指示された装着スケジュール通りに装具が使われているか」「装具を外すタイミングを患者が誤解していないか」を観察することが大切です。
Q. TKA術後の患者が「足が動かない」と訴えてきたときの初期対応は?
A. すぐに循環・神経障害の観察項目(足先の冷感・皮膚色・知覚・運動障害・足背動脈の触知)をチェックし、所見をバイタルサインとあわせて記録した上で、速やかに医師に報告してください。「動かない」が一時的な感覚異常なのか、本当の運動麻痺なのかは医師の診察が必要です。看護師の判断だけで様子を見ないことが、医原性合併症を見逃さないために重要です。
まとめ:TKA術後看護で大切なこと
TKA術後の観察ポイントは「後出血」と「循環・神経障害」の2つ。とくに循環・神経障害は医原性が多いため、看護師の観察と装具管理が結果を左右します。
基礎を押さえた上で、患者ごとの状態を毎回丁寧に観察すること。それが、後遺症を残さないための一番の近道です。
看護のわからないことは、その場で参考書を開いて確認する習慣をつけることで、自分の看護に自信が持てるようになります。
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