新人看護師がつらいのは当然のこと。自分を責めないで
新人看護師がつらいのは、あなたが弱いからじゃない。
そのひとことを、最初に言っておきたいと思います。
毎日必死にこなして、それでもミスをして、先輩に怒られて。「自分には向いていないのかも」と布団に入っても頭がぐるぐるする夜、あると思います。
私も15年前、全く同じようにつらかったです。
「何をやっても怒られる」と感じていた時期がありました。周りが怖くて、仕事に取り組めなくなっていた時期も。今から思えばバーンアウトに近い状態だったかもしれません。
15年目の今も「自分は看護師に向いていないな」と感じることがあります。乗り越えた話をしたいわけではなく、今も迷いながら続けている先輩として、あの頃のことを振り返ってみたいと思います。
新人看護師がつらいのは、あなたが弱いからじゃない
新人看護師の1年目は、構造的につらくなるようにできています。
覚えなければならないことの量が、他の職種と比べても膨大です。薬の知識、疾患の知識、処置の手順、記録の書き方、申し送りの作法。それだけでも十分に多いのに、そこに「命を扱う」というプレッシャーが重なります。
ミスが許されない環境で、ミスをしながら覚えるしかない。これが看護師の1年目の現実です。
しかも先輩たちとの関係が、慣れるまでは緊張の連続です。誰がどういう人かわからない状態で、毎日指導を受けながら働く。先輩ごとに言うことが微妙に違うこともある。「あの先輩に聞いたらこう言われたのに、別の先輩には逆のことを言われた」という経験、ある方も多いと思います。
つらいのは、あなたが弱いからではありません。新人がつらくなる理由が、仕事そのものの中に組み込まれているのです。
何がつらいのか整理してみる
「つらい」という感覚は正直、ひとかたまりでやってくるので、何がつらいのかを分けて考えるのが難しいですよね。少し整理してみます。
業務量と覚えることの多さ
新人の頃は「全部初めて」の連続です。今日覚えたことが明日には違う場面で出てきて、また一から考えないといけない。覚えることが多すぎて、覚えたそばから次が来る感じが続きます。
ミスへの恐怖
医療の現場でミスをすることへの怖さは、他の仕事のそれと少し違います。「患者さんに何かあったら」という恐怖は、ベテランでも消えないですが、新人の頃は特に重くのしかかります。
ミスで落ち込む気持ちが続く方は、こちらの記事も参考になるかもしれません。
先輩との関係
先輩が怖い、という悩みは新人の頃に特に多いです。怒られることへの恐怖が積み重なると、先輩の顔色をうかがうことに神経を使いすぎて、仕事そのものに集中できなくなります。
先輩との関係で悩んでいる方は、看護師の先輩が怖いときの話も読んでみてください。
夜勤の負担
夜勤は体力的にも精神的にも、慣れるまでに時間がかかります。生活リズムが崩れて、疲れが抜けない状態が続くと、気持ちの余裕もなくなっていきます。夜勤がつらい方はこちらも合わせてどうぞ。
理想と現実のギャップ
看護師を目指した理由が「患者さんの役に立ちたい」だったとして、実際の現場では記録と処置とナースコールに追われて、「これが自分のやりたかったことだったかな」と感じる瞬間があります。このギャップも、じわじわとしんどさを作り出します。
もし「辞めたい」という気持ちが出てきているなら、1年目で辞めたいと感じたときの話も参考にしてみてください。人間関係のつらさが重なっている方は、こちらも合わせてどうぞ。
「つらい」のピークはいつ頃か
つらさのピークは人によって違いますが、よく聞く波があります。
3ヶ月目は、緊張が少し解けてきて、「できていないこと」が見え始める時期です。最初は緊張で気づけなかった自分の未熟さが、じわじわと見えてくる。「こんなにできないのか」という落ち込みが来やすいです。
半年頃は、仕事の全体像がなんとなく見えてきて、でも自分はまだ全然追いついていないと感じる時期です。先輩との差がはっきり見えてくるので、焦りが強くなります。
1年目の終わりは、「もう1年経つのに、これしかできないのか」という評価の時期と重なって、落ち込みやすいです。年度末の人事評価や、翌年の後輩の入職が見えてきて、余計に追い詰められる感覚があります。
ただ、全員が同じペースで成長するわけではないし、同じタイミングで落ち込むわけでもありません。周りと比べて焦ることが一番消耗します。
15年前の自分も、同じようにつらかった
ICU で1年目を過ごしました。
正直に言うと、あの頃は「いつも自分は看護師に向いていない」と思いながら働いていました。ICU は処置が多く、とにかく焦る毎日でした。マルチタスクと瞬間的な判断が求められる場所で、「自分にはこの仕事は無理かもしれない」という感覚が常にありました。
それに加えて、先輩によって言うことが違っていました。Aさんにこう教えてもらって動いたら、Bさんに「なんでそうするの」と言われる。どちらの指示が正しいのかもわからないまま、怒られることが続いていくうちに、何をやっても怒られる気がしてきました。
「がんばっても怒られてばかり」という状態が続くと、人は段々と周りが怖くなります。怖くなると、余計にミスが増える。ミスが増えると、また怒られる。この悪循環に入ってしまっていた時期があります。
今から思うと、バーンアウトの手前か、その中にいたのだと思います。辞めたいと思っていました。でも、辞めることもできなかった。他の仕事をする勇気がなかったから、続けていた、というのが正直なところです。
その後、精神科の病棟に異動になりました。
異動する前は「自分には無理だ」と思っていました。人と話すことが得意ではないし、精神科は向いていないという確信に近い感覚がありました。
でも、精神科に来てみると、処置が少なくて、落ち着いて患者さんと向き合える時間がある。急いで動かなくていい分、ゆっくりと丁寧に話を聞くことができる。「楽しい」と感じる瞬間が増えていきました。
3年目になると、仕事を覚えて自分の判断で動けるようになってきて、また少し楽になりました。
一番驚いたのは、「自分は人と関わるのが苦手だ」と思っていたのに、精神科では一人の患者さんとじっくり向き合うことにのめりこめたことです。苦手だと思っていたことが、実は深く関われる力だったのかもしれない、と気づきました。
環境が変わると、見える景色が変わることがある。ICU でバーンアウトしかけていた自分が、精神科では「楽しい」と思えた。あの経験があるから、今でも続けられているんだと思います。
ただ、「向いていない」という感覚は、15年目の今も完全には消えていません。それでも続けています。
今つらい人に伝えたいこと
「石の上にも三年」という言葉があります。
正直に言うと、3年続けることで見えてくるものは確かにある、と思います。仕事を覚えて、自分の判断で動けるようになって初めて、「楽しい」と感じる余裕が出てくるのは事実だからです。
でも、「自分に合わなくて辞めたいと思いながら働くのはしんどいだけ」というのも、同じくらい本当のことだと思っています。無理なら離れていい、というのが今の自分の考えです。
じゃあどうすればいいか、という話をしたくて。
一つは、つらい理由が「環境」なのか「仕事そのもの」なのかを、少し分けて考えてみることです。私の場合、ICUでのつらさは「仕事に向いていない」のではなく、「その環境が自分に合っていなかった」のかもしれなかった。同じ看護師でも、場所が変わると全然違う体験になることがあります。
もう一つは、しんどいときは誰かに話すことです。私は1年目のしんどさが限界に近いとき、友達に話して気持ちを切り替えることをしていました。解決策が出なくても、話すだけで少し軽くなることがある。職場の外に話せる人がいるかどうか、それだけでも違います。
やりがいについて言うと、僕が「楽しい」と感じる瞬間は、患者さんと関係を築けたときです。一緒に楽しそうに話してくれたとき。重症だった人が良くなって帰っていく姿を見たとき。そういう瞬間はあります。毎日ではないけれど、あります。
つらさの中にそういう瞬間がゼロではないなら、それは続けるひとつの理由になる気がします。でも本当にゼロなら、それはまた別の話です。
15年前の自分に声をかけるとしたら、こう言いたいです。
「もっと肩を抜いて楽しく働いてな」
怒られることへの恐怖で体をこわばらせていた1年目の自分へ。もっと力を抜いて、少しくらい失敗してもいいよ、と伝えたい。よく頑張ったとも思う。でも、もっと楽でよかった。
今つらい人にも、同じことを思います。
もっと肩の力を抜いていいです。
あなたがつらいのは、あなたが弱いからじゃない。その仕事の構造がそうなっているから。それと、あなたがちゃんと真剣に向き合っているから、です。
15年目の今も、「自分は向いていないな」と感じることはあります。それでも続けています。乗り越えた先輩、という顔はできません。今もときどき迷っているし、それでも明日また病棟に行きます。
もし「環境を変える」という選択肢を頭の片隅に置きたい人がいたら、私自身が病院を変えてどう変わったかを書いた記事を置いておきます。今すぐ動かなくてもいいので、いつかの参考にしてもらえれば。
つらい今を、無理に「乗り越えるべき試練」にしなくていいんじゃないか、と私は思っています。私自身が肩の力を抜けなかったぶん、誰かには少し抜いていてほしい。それくらいの気持ちで、この記事を書きました。