看護師がアドラー心理学で人間関係を楽にする方法|課題の分離の使い方

看護師の人間関係に疲れていませんか?後輩に悪口を言われた私が、アドラー心理学「課題の分離」で気持ちが楽になった話。15年目の現役ナースが実体験で解説します。

看護師 アドラー心理学 課題の分離
この記事は 約8分 で読めます
目次
  1. アドラー心理学とは?看護師にどう活きるのか
  2. 「課題の分離」とは何か
  3. 後輩に悪口を言われた私が「課題の分離」をやってみた
  4. 「他人にどう思われるか」を手放したら変わったこと
  5. 看護現場でアドラー心理学を使うときの注意点
  6. アドラー心理学を学びたい看護師におすすめの本
  7. 看護師がアドラー心理学を学ぶときによくある質問
  8. まとめ:自分の人生を歩むために

「失敗してしまった。師長にどう思われるだろう」

他人の目が気になって行動できなかったり、他人の言動によって自分の思うように行動できないときがあります。私もそんなことがよくあります。

今日、私が「仕事できていない」と、後輩看護師が悪口を言っていたという噂話を聞きました。つらいですね。

今までこんなことがあると「どうすれば後輩に悪口を言われずに済むのか、良いように思われるにはどうすればいいのか」と私は考えていました。

しかし、それは間違いだと最近になって気づきました。

私が考えるべきだったのは、文句を言われた理由です。

なぜ「仕事ができていない」と言われたのか?

自分の行動を改める点はどこか?

同じことを繰り返さないために何ができるか?

指摘された自分の行動を振り返ること。それが、アドラー心理学で言うところの「課題の分離」です。

アドラー心理学とは?看護師にどう活きるのか

アドラー心理学は、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーが提唱した心理学です。フロイトやユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」のひとりとされていますが、日本では『嫌われる勇気』という本で広く知られるようになりました。

アドラー心理学の核となる考え方のひとつが「課題の分離」です。「自分の課題」と「他人の課題」を切り分けて、他人の課題には踏み込まない。逆に、自分の課題に他人を踏み込ませない。シンプルに言えばそれだけのことなのですが、看護師の現場では、これがとても難しい。

看護師の仕事は、人と関わることが中心です。患者・家族・医師・先輩・後輩・他職種。1日に何十人もの人と関わり、その人たちの感情や評価を受け止め続けます。

その中で「自分はどう思われているか」「相手にどう動いてほしいか」を気にしすぎると、心が削られていきます。アドラー心理学の「課題の分離」は、その削られすぎる前に、いったん立ち止まる視点をくれます。

「課題の分離」とは何か

「課題の分離」とは、目の前の出来事について「これは誰の課題か」を見極める考え方です。

具体的には、こう考えます。

その結果を引き受けるのは誰か?

その行動を変えられるのは誰か?

たとえば、後輩に悪口を言われたとします。「悪口を言うかどうか」を決めるのは後輩です。私ではありません。これは「後輩の課題」です。

一方、「悪口を言われたあと、自分がどう動くか」を決めるのは私です。これは「私の課題」です。

後輩の課題に私が踏み込んでも、何も変わりません。「悪口を言わないでほしい」と頼んでも、それを受け入れるかどうかは結局、後輩次第。私が動かせるのは、私自身の行動だけです。

申し送りや勉強会の発表で、周りの人に良いように見られようとする人がいますが、その行動の根っこにあるのは「他人の評価をコントロールしたい」という気持ちです。でも、自分の発表を聞いた人がどう感じるかは、結局その人次第です。

自分の行動で他人の考えに影響を与えることはできても、最終的に決めるのは相手です。そのことを忘れて、相手に良いように見せようとする行為は、極端に言えば「他人の人生に自分が生きてしまう」ということになります。

後輩に悪口を言われた私が「課題の分離」をやってみた

悪口の話を聞いた直後は、正直、気持ちがざわざわしました。「どこの誰が言ったんだろう」「他にも言われているんだろうか」「どうすれば言われなくなるんだろう」――そんな考えがぐるぐる頭を回りました。

でも、ふと立ち止まって、課題の分離をやってみました。

まず、「悪口を言うかどうか」は後輩の課題です。私がコントロールできることではありません。ここに私の時間とエネルギーを注いでも、消耗するだけです。

次に、「私の仕事ぶりに改善点はあったか」を考えました。これは私の課題です。後輩が指摘した「仕事ができていない」という言葉の中に、もし真実が含まれているなら、それは私が引き受ける部分です。具体的に、どの場面のどの行動を指して言われたのか。それを冷静に振り返って、改善できる部分があれば改善する。改善の必要がなければ、それでよい。

そして最後に、「悪口を言ってきた後輩との関わり方をどうするか」を考えました。これも私の課題です。距離を置くのか、それとも仕事の場面では普通に関わるのか。私自身が決められることです。

こうやって整理すると、頭の中のざわざわが、少しずつ落ち着いていきました。

「他人にどう思われるか」を手放したら変わったこと

「他人の評価」を気にしないようにする、と言うと冷たく聞こえるかもしれませんが、実際にやってみると、むしろ楽になります。

以前の私は、申し送りで先輩から何か指摘を受けると、その日1日ずっと引きずっていました。「次の申し送りもこうやって指摘されるんだろうか」「私のことを良くないと思っているんだろうか」と、頭の中で先輩の表情を何度も再生していました。

課題の分離を意識するようになってから、その時間が短くなりました。指摘の中身は私の課題として受け止める。指摘した先輩が私をどう思っているかは、先輩の課題なので私には関係ない。そう切り分けると、引きずる時間が30分や1時間で済むようになりました。

もちろん、完全には消えません。今でも、強く言われたあとはしばらく落ち込みます。「自分の感覚」を大切にしている分、人の言葉が刺さりやすい性質が私にはあります。

でも、刺さったあとに「これは私の課題か、先輩の課題か」と自問する習慣ができたことで、刺さったまま腐らせることが減りました。少しへこんでも、この記事のように言葉に変えて、明日また働きに行ける。それで十分だと思っています。

看護現場でアドラー心理学を使うときの注意点

「課題の分離」は便利な考え方ですが、看護現場で使うときに気をつけたい点が3つあります。

1. 「無関心」とは違う

課題の分離は「他人のことはどうでもいい」という意味ではありません。患者や家族、同僚への関心を失っていいわけではない。むしろ、関心を持って関わるからこそ、相手の課題を尊重する。「私が動かせるのはここまで」という線引きを持つことで、関わり続ける力を残せます。

2. 自分の責任は果たす

「これは患者の課題だから」と言って、必要なケアを放棄するのは違います。看護師としてやるべきことは、まず自分の課題として責任を果たす。その上で、結果をどう受け取るかは相手の課題、と考えるのが正しい順番です。

3. 一気に変わろうとしない

長年「他人にどう思われるか」を気にしてきた人ほど、課題の分離は最初うまくできません。私もそうでした。ひとつの場面で意識して、できなくて、また次の場面で意識して、少しずつ慣れていく。1日や1週間で身につくものではないので、焦らずに少しずつ試してみてください。

アドラー心理学を学びたい看護師におすすめの本

アドラー心理学を体系的に学ぶなら、対話形式で読みやすい『嫌われる勇気』が入口として最適です。私自身、この本を読んでから「課題の分離」が日常で使える形になりました。

看護師のための心理学入門書というわけではありませんが、「他人との関係でしんどさを感じている人」全般に効く本です。哲学者と若者の対話形式で進むので、心理学の専門書よりずっと読みやすい構成になっています。

看護師がアドラー心理学を学ぶときによくある質問

Q. アドラー心理学は心理学の知識がなくても理解できますか?

A. はい、専門知識は不要です。アドラー心理学は「日常の生き方」に焦点を当てた考え方なので、用語よりも「どう自分の生活に当てはめるか」が中心になります。私自身、心理学を学んだことはなく、看護師の日常の中で使える形で理解しています。最初は『嫌われる勇気』のような対話形式の本から入るのがおすすめです。

Q. 「課題の分離」と「他人を切り捨てること」は違うのですか?

A. 違います。課題の分離は「他人を尊重する」考え方です。相手の課題に踏み込まないのは、相手の領域を尊重するためであって、無関心になるためではありません。患者の課題、同僚の課題、それぞれを尊重した上で、自分にできることに集中する。冷たさではなく、健全な距離感の話です。

Q. 看護師の仕事で、患者の感情まで「他人の課題」と切り分けていいのですか?

A. 患者の感情を受け止めることは看護師の大事な役割です。ただ、患者がどう感じるかを「自分がコントロールしようとしない」ことは大切です。たとえば、痛みを訴える患者に対して、必要なケアは責任をもって行う(自分の課題)。その上で、患者がそのケアにどう反応するか、満足するかしないかは、患者の領域として尊重する(相手の課題)。この切り分けがあると、燃え尽きにくくなります。

Q. 先輩からの指摘も「他人の課題」として聞き流していいのですか?

A. 聞き流すのとは違います。指摘の中身が私の行動に関するものなら、それは私の課題です。改善できる部分があれば改善する。ここは自分の責任として受け止めます。一方で、先輩が私をどう評価しているか、好きか嫌いかは先輩の課題です。そこを気にしすぎないことで、指摘の中身だけを冷静に受け取れるようになります。

Q. アドラー心理学を実践しても、悪口を言われたら傷つきます。普通ですよね?

A. 普通です。私自身、課題の分離を意識するようになってからも、悪口を言われたら傷つきます。傷つかないようになるのが目的ではなくて、傷ついたあとに引きずる時間を短くするのが目的です。「ああ、また傷ついた。これは私の課題か、相手の課題か」と問い直す習慣ができれば十分です。完全に平気になる必要はありません。

まとめ:自分の人生を歩むために

後輩に悪口を言われた経験を、アドラー心理学の「課題の分離」で整理してみました。

他人にどう思われるかを気にして消耗するより、自分の行動を振り返って改善するほうが、結果的に自分のためになる。そして、改善できないこと、相手の領域に属することは、手放してよい。

看護師の現場は人と関わり続ける仕事だからこそ、こういう視点を持っておくと、心が削られすぎずに済みます。私もまだ完璧にはできていません。でも、知っているだけで、しんどい場面で立ち止まれるようになりました。

少しへこんでも、明日また笑顔で頑張れる自分でいたい。そう思いながら、今日も看護師を続けています。


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同じように人間関係でしんどさを感じているあなたが、少し楽になれるといいなと思っています。

ハロのイラスト @salaryman_nurse
WRITTEN BY

ハロ看護師15年

ICU 1年 → 精神科身体合併症 12年 → 地域包括ケア

「向いてないなあ」と15年目の今も思いながら、不器用に、一生懸命、働いています。

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