男性看護師15年目の本音|あるあるの裏にある孤独とキャリアの現実

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男性看護師の割合が増えている、というデータはネットにあふれています。

厚生労働省の衛生行政報告例によると、看護師全体に占める男性の割合は8.6〜8.7%前後で、ここ数年じわじわと増加傾向にあります。

でも、朝の申し送りを想像してみてください。

ずらーっと女性が並んでいるなか、男は自分ひとり。

その光景は、前の病院でも、転職した今の病院でも、15年間変わっていません。

この記事は、そういう記事です。統計の話ではなく、数字の後ろにある感覚を書きます。「あるある」の表面ではなく、その裏にある本音を書きます。


目次

男性看護師の割合は増えている。でも現場の感覚は変わらない

データ上は増えているのに、なぜ現場の感覚は変わらないのでしょうか。

一つには、8.7%という数字の薄さがあります。10人いれば9人が女性。20人いれば18人が女性。施設によっては病棟に男性看護師が1人しかいない、という状況は今も珍しくありません。

でも数字以上に、「文化」が変わっていないのだと思っています。

朝の申し送りで「浮いているな」と感じる感覚は、職場が変わっても消えませんでした。人が変わっても、建物が変わっても、あの「なんとなく場違いな空気」は消えなかった。

転職すれば解決するかと思っていました。でも解決しませんでした。

これは愚痴ではありません。事実として、変わらなかった、ということです。


男性看護師あるある ── 表に出ない本音

力仕事は「男だから当然」と振られる

男性看護師であるということは、重たい患者のベッド移動、体格のいい患者の更衣介助、暴れる患者への対応を「男性だから」という理由で率先して担当することを意味します。

これは受け入れています。体力がある分、役に立てる場面があるのは事実だし、求められることには応えたい。

でも、正直に言うと、本音はもう少し複雑です。

わかるけど、忙しいとき、こっちが困っているとき構わずに降られるとしんどくなる。。

「振られること」自体と、「振られ方」は、別の話なんです。

力仕事を頼まれること自体は、まあ、そうだよなと思っています。でも、自分もいっぱいいっぱいのときに「ちょっとお願い」と来られると、言葉にならない疲弊が積み重なります。

「。。」と書きましたが、これは感情が言い切れないときの自分の癖です。怒りというより、なんとも言えない重さ。愚痴になりたくないけど、軽く流せるほど薄くもない感覚。

「いちばん記憶に残っているのはどんな場面ですか?」と聞かれたことがあります。

答えは「忙しいとき」でした。

特定のエピソードが出てこなかったのは、「そういう場面」が日常のあちこちにあって、1つに絞れなかったからです。事件ではなく、頻度の問題です。


相談できる相手がいない

「相談というか、話できる人がいない。小言を言える人がいない」

これが、女性中心の職場で男性看護師として働く感覚を、もっともよく表していると思います。

同性の先輩に「最近しんどいんですよ」と言える環境が、どれだけ仕事を続けるうえで支えになるか。それが当たり前にある人は、たぶん気づいていない。

精神科に12年いたのですが、あそこには男性看護師の先輩と後輩がいました。患者対応のフォローをし合ったり、立場やキャリアの悩みを話したり、「自分だけじゃないな」と思える人が身近にいた。それが、精神科を12年続けられた理由の一つだったと、今は思います。

転職後にそれがなくなった変化は、思っていたより大きかったです。

「小言を言える人がいない」という感覚は、前の病院でも今の病院でも変わっていません。転職で解決しなかった問題の一つです。


患者から「先生」と呼ばれる

これは男性看護師あるあるの定番で、誰もが経験します。

外来で「先生、採血ですか」と聞かれたり、病棟で「先生お願いします」と呼ばれたり。白衣を着た男性=医師、というイメージはまだ根強い。

「看護師です」と答えると驚かれることもあります。これは今も昔も変わらない風景です。


精神科で12年 ── 男性看護師だから求められたこと

精神科の病棟は、「男性だから」という役割がもっとも色濃く出る場所の一つでした。

急性期の患者が大声を上げて暴れているとき、男性看護師は前に立つことを求められます。これはほぼ自動的に、暗黙のうちに。

怖かったです。それでも前に出なければならない、という役割のプレッシャーがありました。

「怖い」と感じながら「でも出るしかない」という気持ちで立つ場面が、精神科の12年間にはたくさんありました。特定の1回ではなく、そういう場面が繰り返しあった、ということです。

「なんで患者のためにやっているのに、こういう扱いを受けるのか」と思うこともありました。患者の言葉や行動に傷つきながら、でも次の日も同じ場所に立ちに行く。

男性看護師でなければ、もう少し違う距離感で働けたかもしれない、と思うことが、正直ないわけではありません。

精神科身体合併症病棟という特殊な環境で、手術・化学療法・妊産婦も担当しながら、外科・内科など幅広い看護を経験できたことは、今でも自分の財産だと思っています。でも「男性だから担う役割」の重さは、12年分の蓄積として体に残っています。


男性看護師のメリット・デメリットを15年の実感で語る

メリット:15年やって実感したこと

インターネットを検索すると、「男性看護師のメリット」として以下のようなものが並びます。

  • 希少価値があり、職場で重宝される
  • 力仕事で頼りにされる
  • 年収が安定している
  • 男性患者から信頼を得やすい

率直に言います。

やりがいがある仕事とは思うけど、男性看護師でよかったと思ったことはない。

これが15年の実感です。

「男性であること」がプラスに働いた、と感じた瞬間を思い出そうとしても、出てきません。

誤解してほしくないのは、「看護師という仕事のやりがい」は感じているということです。患者との関係を築けたとき、回復していく様子を間近で見られたとき、それは職種を問わず看護師という仕事のやりがいです。

でも「男性看護師だから感じられるやりがい」は、15年振り返っても思い当たらない。

「希少価値があって重宝される」は、力仕事を当然のように振られることの言い換えでしかないと感じています。「力仕事で頼りにされる」も同様です。「年収が安定している」は、夜勤・残業あってこそで、男性だから給与が高いわけではありません。


デメリット:こちらは実感がある

女性患者から「男性の看護師さんはちょっと……」と言われることはあります。これは患者さんの感覚として理解できるし、非難したいわけではありません。でも、何度経験しても、慣れるものでもない。

職場内の孤立感は、デメリットというより「構造」に近いですが、確実にあります。

男性だからクリニックに転職できると思わなかった、という経験もあります。クリニックは夜勤がない。夜勤手当がなくなると給料が大きく下がる。男性看護師は給与水準を保つために夜勤がある職場を選ばざるをえない、という構造が現実としてあります。

年収の詳細については、別の記事に書いていますので、気になる方はそちらも読んでもらえると。


「やめとけ」に対する15年目の答え

「男性で看護師になるのはやめとけ」と言われる、という話をよく見かけます。

私自身はそう言われた記憶はないですし、「やめとけ」というほど強く思うかと言えば、そうではないです。

でも「男性看護師にはこんなにメリットがある」と背中を押せる、かというと、それも違う。

つらいことはあります。上で書いてきたような、振られ方のしんどさ、相談相手のいない孤独、精神科で前に立つ怖さ、女性中心の文化のなかでの浮いた感覚。

ただ、それは「男性だから特別につらい」というより、「男性が働きづらい構造になっている中でのしんどさ」だと思っています。この違いは後の章でもう少し書きます。

「やめとけと言うほどではない。でも、メリットを期待して入るなら、違うかもしれない」というのが正直なところです。


15年目の今、キャリアに思うこと

「男性で看護師をやっていると、周囲からいろいろ言われませんか?」と聞かれることがあります。

家族や友人など、病院の外からは、特にないです。

「えっ、男の人が看護師?」と驚かれたことがないわけではありませんが、からかわれたり、変な目で見られた記憶は特にない。外の人からの偏見は、個人的にはほとんど経験していません。

むしろしんどいのは外側より内側、つまり職場のほうです。

看護師全般として男性が働きづらい構造になっている。

これは15年目の実感として、そう思っています。

「男性 vs 女性」の対立の話ではないです。個別の同僚が意地悪だとか、そういう話でもない。看護師という職種が、ケアの文化も、シフトの組み方も、職場のコミュニケーションも、女性が中心になって成立するように設計されている。男性が後から入っていったときに、どこかにはみ出すような感覚が生まれるのは、構造として自然なことだと思っています。

もう一つ、これは男女関係なく感じていることですが。

男性・女性関係なく、40・50歳になっても体力的に夜勤・肉体労働を続けられる自信がない。

「年をとっても働ける自信がない」という感覚は、転職前からずっとあります。「この働き方を続けたくない」という気持ちも正直あります。

だから今、副業としてブログを書いています。「組織から給料をもらうだけではなく、自分の力でお金を稼げるようになりたい」という気持ちで始めました。管理職は自分には合わないと判断したし、資格取得(認定看護師・専門看護師)もコストとリターンを考えると現実的ではない、という結論に至りました。

転職のことは別記事に詳しく書いていますが、転職で「男性が自分ひとり」という状況は解決しませんでした。

キャリアについては、まだ模索しています。「これが答え」とは言えないし、「行動せんとなんも変わらないよ」と思いながら、少しずつ動いている、というのが今の正直なところです。


まとめ ── 男性看護師は増えても、現場はまだ途中

「男性看護師は増えている」「需要は高まっている」「将来性がある」。

そういう話は本当のことだと思います。数字として、制度として、少しずつ変わってきているのも確かです。

でも、朝の申し送りで「浮いている」感覚は変わっていない。
相談相手がいない孤独は、転職後も続いている。
力仕事を当然のように振られることへの複雑な感情は、15年経っても消えていない。
「男性看護師でよかった」と思えた瞬間は、思い出せない。

「まだ途中」というのは、変化を否定したいわけではなく、現場の実感がデータに追いついていない、ということです。

同じ立場で同じ感覚を持っている人がいるとしたら、それは自分だけじゃないです。この記事に書いてきたことは、私の個人的な話ですが、「似たようなことを感じているな」という人に届いたら、それで十分だと思っています。

転職や次のキャリアについて考えている方は、看護師の転職サイトをまとめた記事も参考にしてみてください。私自身が経験した転職については、別の記事に書いています。


よくある質問

男性で看護師になるのは本当に「やめとけ」なのか?

男性看護師の割合は増加傾向にあり(厚生労働省調査で約8.7%)、「男性看護師を増やしたい」と回答する病院も7割以上あります。需要という意味では、一般的にはあると言われています。

15年やってきた実感として、「やめとけ」とまでは思いません。でも「男性だから得られるメリットがある」とも思えていない。つらいことはあります。ただそれは「男性看護師だから」というより、「男性が働きづらい構造の中でのしんどさ」だと感じています。「メリットがあるから」という動機で選ぶと、違和感が出るかもしれない。そういう意味での「違うかもしれない」はあります。

男性看護師のキャリアパスは管理職しかないのか?

認定看護師・専門看護師・訪問看護・産業看護師など、キャリアパスとして挙げられる選択肢は複数あります。

私の場合、管理職は「自分のやりたいことではない」と判断しました。資格取得も、研修・費用・時間に対して給与アップが月3,000〜5,000円程度では合わないという結論でした。今は副業(ブログ)という形で、組織に依存しない収入源を育てることを模索しています。これは万人向けではないですが、「管理職か現場か」以外にも、自分で選択肢を作ることはできる、という感覚で動いています。

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読んでいただき、ありがとうございます。

看護の現場で「もう限界かも」と感じる夜があるなら、転職を「逃げ」と思わないでほしいです。場所を変えて、また穏やかに働けるようになった人を、私はたくさん見てきました。

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※ 必ず転職する必要はありません。「どんな選択肢があるか」を知るだけでも、きっと心が少し軽くなります。

この記事を書いた人

看護師歴15年。ICU・外科病棟・精神科身体合併症病棟・地域包括ケア病棟と4科を経験。現在も現役で病棟勤務をしています。

特に精神科身体合併症病棟では12年勤務し、精神疾患を抱えながら身体合併症の治療を要する患者さんと向き合ってきました。看取り、認知症ケア、終末期、急変対応――現場でしか得られないリアルを大切に、自分の体験と感情を正直に書くブログを運営しています。

「正解を教える」のではなく、「同じ目線で一緒に考える」スタンスで、読者の方が少し楽になる文章を目指しています。

【主な発信テーマ】
・看護師のキャリアと転職
・精神科看護のリアル
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