看護師のプリセプターがきつい。人によって言うことが違う理不尽さの話

プリセプターや先輩によって言うことが違う。調べても出てこない、誰にも相談できない。新人看護師の孤立感を、15年目の看護師が自分の1年目の経験から語ります。あなたのせいじゃないと伝えたくて書きました。

病院の廊下で書類を持ち考える看護師のイラスト
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目次
  1. 人によって言うことが違う。それが一番きつかった
  2. 誰にも相談できないという孤立
  3. 調べても答えが出ない
  4. 同期も先輩も、みんな余裕がない
  5. 医療者以外には話が通じない
  6. プリセプター・先輩を「悪い人」にしたいわけじゃない
  7. 15年目の自分が、後輩に対して気をつけていること
  8. それでも、あのしんどさは消えない
  9. よくある質問
  10. 先輩によって言うことが違うとき、どちらに従えばいいですか?
  11. プリセプターに相談したいけど怖くて言えません。どうしたらいいですか?
  12. おわりに

プリセプターや先輩から教わった通りにやったのに、別の先輩から「それ違う」と言われる。

あの感覚、今でも覚えています。何が正解なのかわからないまま、でも間違えたら怒られる。そういう状態が、しんどくなかったはずがない。

この記事は、プリセプターや先輩との関係でしんどさを感じている新人看護師の方に向けて書いています。対処法を提示できるわけではないし、この状況に気持ちよく終止符を打つような話でもありません。ただ、同じ経験をした人間として、その理不尽さをそのまま言語化しておきたいと思いました。

人によって言うことが違う。それが一番きつかった

1年目に経験したことで、今でも記憶に残っているのが生食フラッシュのやり方をめぐる出来事です。

ある先輩に教わった方法でやっていたら、別の先輩に「それは違う」と怒られました。自分では「教わった通りにやった」という認識でいたので、最初は何が問題なのかもわからなかった。

でも「教わったやり方でやりました」とは、なんとなく言い出せませんでした。言えば、教えてくれた先輩と怒った先輩の間で板挟みになる気がして。結局、黙って「すみません」と言うしかなかった。

この「人によって言うことが違う」という状況は、新人にとってかなり特殊な理不尽さだと思っています。自分が悪いのか、先輩が悪いのか、どちらでもないのか、判断する材料すら持っていない。そこに放り込まれて「違います」と怒られる。

先輩が怖いと感じる気持ちについては、先輩が怖いと感じている看護師へでも書いています。状況は少し違いますが、1年目のしんどさとして重なる部分があるかもしれません。

誰にも相談できないという孤立

しんどかっただけで終わればまだよかったかもしれないのですが、この経験を誰にも話せなかったことも、じわじわときつかったです。

調べても答えが出ない

「人によって言うことが違う」という問題は、調べようとしても答えが出てきません。

医療の手技や処置の手順に関しては、教科書やガイドラインに書かれていることもあります。でも「ある病棟のある先輩はこうしていて、別の先輩はこうしている」というズレは、どこにも載っていない。そういうグレーゾーンが現場にはたくさんあって、新人はその正解を知る手段がない。

調べれば解決できることなら、まだやりようがある。でも調べても出てこない問題に直面したとき、「どうすればいいんだ」という気持ちをどこに向けたらいいかわからなくなります。

同期も先輩も、みんな余裕がない

同級生の看護師に話せるかというと、それも難しかったです。自分のことで手いっぱいで、お互いに共有できる状態じゃなかった。

「今日こういうことがあって」と話し始めても、聞いてほしい内容まで行き着く前に、「わかる、私も大変で……」という話になっていく。悪いことではないし、お互いさまだとわかっていても、誰かに受け取ってもらう余地がなかった。

精神的に限界を感じている方は、1年目で精神的に限界を感じている看護師へも読んでみてください。

医療者以外には話が通じない

じゃあ職場の外に話せるかというと、これもまた難しかった。

医療の仕事をしていない友人や家族に、生食フラッシュのやり方をめぐって先輩によって言うことが違う、という話をしても、その具体的なしんどさは伝わらないんです。「大変だね」とは言ってもらえる。でもそれは、内容じゃなくて感情に対してのリアクションで、「なんでそれが問題なのか」まではわかってもらえない。

誰かに話したくても、話が通じる相手がいない。調べても答えが出ない。職場の中では共有できる余裕がない。この三重の構造が、新人の孤立感を作っていたんだと、今になって思います。

当時は「自分だけがうまくやれていない」という感覚でいっぱいで、構造として捉えられる余裕なんてありませんでした。

プリセプター・先輩を「悪い人」にしたいわけじゃない

ここまで書いてきて、先輩やプリセプターを批判したいわけじゃないことは、先に言っておきたいと思います。

あの頃の先輩たちも、自分の仕事をこなしながら新人の指導をしていた。余裕がある環境ではなかったし、悪意があってやっていたわけじゃないと思っています。それぞれが正しいと思っているやり方を教えてくれていた。

でも、新人にとっては「先輩Aのやり方でやったら先輩Bに怒られた」という事実だけが残る。誰も悪くないのに、新人だけが困る。その構造が問題だとは思っていますが、だからといって特定の誰かを責めたいわけではないです。

職場の人間関係全般のしんどさについては、看護師の人間関係が辛い方へで書いているので、参考にしてみてください。

新人のつらさは、プリセプターや先輩との関係だけじゃなくて、もっといろんなことが重なっていることが多いと思います。新人看護師がつらいときに読む記事も、もしよければ。

15年目の自分が、後輩に対して気をつけていること

今の自分は、後輩の指導に関わる立場になっています。

そのなかで一番気をつけているのが、「違う」とは言わないことです。

後輩が何か処置をしたとき、自分の思っていたやり方と違っていても、すぐに「それは違う」とは言わない。まず「どうしてそうしたの?」と聞くようにしています。

理由を聞かずに否定したら、相手は「何が正解かわからないまま怒られた」という経験をするだけになる。でも理由を聞けば、「別の先輩にそう教えてもらった」という背景がわかることもある。それがわかれば、「こういう場面ではこっちのやり方の方がいい」という話ができる。

これは、1年目に自分がされてしんどかったから、やらないようにしていることです。正解を教えているつもりが、新人にとっては理不尽な否定になっていることがある。そのことを、あのころの記憶から忘れないようにしています。

「こうすべき」と言いたいわけじゃなくて、自分がこうしているというだけの話です。

それでも、あのしんどさは消えない

15年経って、あの1年目のしんどさが解決したかというと、そういう話でもないです。

あの理不尽さは、理不尽なままです。今でも、生食フラッシュのことで怒られたあの日の感覚は残っています。解決したから前に進めた、というよりも、なんとなく時間が経って、環境が変わって、いつのまにか日常になっていった。

あのころしんどかったことを、「でも今はわかった」「あれがあったから今がある」みたいに変換するつもりもないです。しんどかったことは、しんどかったまま。

もし今、同じ状況にいる方がいれば、一つだけ伝えておきたいことがあります。

「人によって言うことが違うのに、違うと怒られる」のは、あなたのせいじゃないです。

それを言える人が周りにいないなら、せめてここで言っておきます。

もしその状況が限界に近づいていて、「もう辞めたい」という気持ちまで出てきているなら、1年目で辞めたいと思ったときに読む記事も読んでみてください。辞めることを勧めているわけではなく、同じ気持ちを経験した人間として書いています。

よくある質問

先輩によって言うことが違うとき、どちらに従えばいいですか?

病棟のマニュアルや手順書があれば、それが一応の基準になります。なければ、その場にいる先輩のやり方に従って、あとで確認できるタイミングを待つのが現実的だと思います。

ただ、正直に言うと、1年目の自分は「正解がわからないまま過ごした」というのが実態でした。どちらに従うか以前に、「どちらが正解かもわからない」という状況が続いていた。今は「どうしてそうしたの?」と後輩に聞く側になっていますが、それは新人が迷う構造を自分の経験から理解しているからでもあります。

プリセプターに相談したいけど怖くて言えません。どうしたらいいですか?

相談先はプリセプター一人でなくてよい、ということはお伝えしておきたいです。他の先輩、同期、教育担当の看護師、師長など、別のルートを持っておくことは、選択肢として知っておく価値があると思います。

ただ、私自身は同期にも相談できませんでした。「誰かに話す」こと自体が難しい環境があることも、現実だと思っています。相談できていないこと自体を責める必要はないです。

おわりに

ストレスがどんどん積み重なって、「このままここにいていいのか」と感じてきたとき、辞めたいと思った看護師の体験談を読んでみてください。転職を勧めるというより、似たような経験をした人の話として読んでもらえると思います。

1年目が誰にとっても同じようにしんどいわけじゃないかもしれないし、あなたの職場が特別に理不尽なのかもしれない。どちらかはわからないけれど、しんどいと感じていることは本物だと思います。

「また明日も出勤できた」それだけで十分だと、あのころの自分に言ってあげたい。今しんどい方にも、そういう気持ちで読んでもらえたら、少しでも届くといいなと思っています。

ハロのイラスト @salaryman_nurse
WRITTEN BY

ハロ看護師15年

ICU 1年 → 精神科身体合併症 12年 → 地域包括ケア

「向いてないなあ」と15年目の今も思いながら、不器用に、一生懸命、働いています。

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