栄養アセスメントを「テンプレ入力」で済ませていた看護師が、リフィーディング症候群の患者に教わったこと

病棟のベッドサイドで患者のそばに立つ看護師のイラスト

正直に言います。

最初は、栄養アセスメントを「入院時にやらないといけない業務」のひとつとしか思っていませんでした。様式に患者さんの情報を入力して、チェックして、記録する。それだけです。そこに込められている意味なんて、あまり考えていませんでした。

「ちゃんとしていなかった」という言い方が、たぶん一番正確です。

この記事を書こうと思ったのは、その後に経験した患者さんのことがあるからです。栄養管理がこんなにシビアになるのか、と肌で知った経験。そのとき初めて、テンプレを埋めることとアセスメントすることは、まったく別のことだと気づきました。

同じようにテンプレ入力で済ませている方、栄養アセスメントがいまひとつ腑に落ちていない方に、少し届くものがあれば嬉しいです。


目次

栄養アセスメントを「テンプレ入力」で済ませていた

入院時の栄養アセスメントは、多くの病棟で必須の業務になっています。食事摂取量、体重、BMI、血液データ……決まった項目を決まった様式に入れていく、あの作業です。

私はずっと、その入力を「こなす」感覚でやっていました。

患者さんの体重を測って入力する。Albの値を転記する。「食欲はありますか」と聞いて、「ないです」と返ってきたら「低下あり」にチェックする。それで終わり。次の業務へ。

特に疑問もなく、そのルーティンをこなしていた時期が確かにありました。

摂食障害で入院してくる患者さんと関わりが増えてから、少しずつ感覚が変わっていきました。テンプレに入れた数値の意味が、少しずつリアルになっていく感じです。


栄養アセスメントとは|何を見て、何がわかるのか

栄養アセスメントとは、患者さんの栄養状態を多角的に評価することです。大きくは「栄養スクリーニング」と「栄養アセスメント」に分かれます。

スクリーニングは、低栄養リスクがあるかどうかをざっくり判断する入口の作業。アセスメントは、そこから踏み込んで「どんな状態で、何が原因か」を詳しく評価するものです。

検査データの読み方

看護師が日常的に確認するのは、主に以下のデータです。

  • アルブミン(Alb):3.5g/dL未満で低栄養の目安。慢性的な栄養不足を反映しやすい
  • トランスフェリン・プレアルブミン(RTP):短期的な栄養状態の変化を見るのに適している
  • 体重減少率:1ヶ月で5%以上、3ヶ月で7.5%以上が目安
  • BMI:18.5未満で低体重の基準

現場ではAlbの値を追う場面が特に多いと感じます。ただし、炎症があるとAlbは下がりやすいため、CRPなど炎症マーカーと合わせて読む必要があります。

身体所見から栄養状態を見る

フィジカルアセスメントも重要な情報源です。

  • 筋肉量の低下(側頭筋・大腿四頭筋のやせ)
  • 皮下脂肪の菲薄化
  • 浮腫(低アルブミン血症による)
  • 皮膚・毛髪・爪の変化
  • 口腔内の状態

数値だけではわからないことが、視診・触診で見えてきます。患者さんの見た目の変化を記録する習慣が、長い目で見ると大きな意味を持ちます。

栄養スクリーニングとアセスメントの違い

スクリーニングは全員に行う「ふるい分け」、アセスメントはリスクのある患者さんに行う「深掘り」です。入院時の栄養アセスメント様式は、厳密にはこの両方が混在していることが多く、「アセスメントと呼びつつスクリーニングだった」ということも起こります。


SGA・MNAなどの評価ツール|現場では使えていないのが実態

栄養アセスメントには、いくつかの標準化されたツールがあります。

  • SGA(主観的包括的栄養評価):体重変化・食事摂取量・消化器症状・身体機能・身体診察の5項目で評価。A(良好)・B(中等度低栄養リスク)・C(高度低栄養)の3段階に分類する
  • MNA-SF(簡易栄養状態評価表):高齢者向け。6項目で12点満点
  • MUST:地域・病院どちらでも使えるスクリーニングツール
  • NRS2002:入院患者向けのスクリーニング
  • GLIM基準:2018年に策定された国際的な低栄養診断基準(現象基準+原因基準を組み合わせる)

正直に言うと、私はSGAという名前のツールを意識して使ったことがありません。

ただ、振り返ると、SGAの5項目に相当することは日常の業務のなかで確認していました。体重が減っていないか、食べられているか、下痢や嘔吐はないか、動けているか、やせていないか——それは毎日の観察でやっていたことです。

「SGAができている看護師」と「SGAという名前を知らないがやっている看護師」の間に、意外と差はないかもしれない。でも「何を見ているのか」を意識できているかどうかは、患者さんへの関わり方に影響してくるだろうと思います。

現場の実態として、業務量や時間の制約のなかでSGAを正式に実施できる場面は限られています。そのギャップを認識したうえで、日常のアセスメントをどこまで丁寧にやれるか——それが問われているのだと、今は思っています。


「食べてくれない」の裏にある悪循環|低栄養がさらに食欲を奪う

栄養管理で一番難しいのは、患者さんの食事を思うようにコントロールできないことです。

点滴や経管栄養なら、投与量を計算して管理できます。でも食事は違います。患者さんが「食べる」という意思を持ってくれないと、どうにもなりません。

現場で気づいたのは、「食べてくれない」の裏に悲しい悪循環があることです。

低栄養になると、食欲自体が落ちる。

これがずっと引っかかっていました。食欲がない理由を「好き嫌い」「気分」「精神的な問題」だけで考えていたのですが、そもそも低栄養の状態では身体が食欲を感じにくくなる。食べられないから栄養が入らず、栄養が入らないからさらに食べられなくなる。

「食べてほしい」という気持ちで食事を勧めても、身体がそれを受け取れる状態になければ、どれだけ声をかけても届きにくい。

だから栄養管理は難しい、とようやく腑に落ちました。

患者さんが食べない理由を「意欲の問題」だけで捉えていたとき、私は栄養状態そのものを見ていなかったのかもしれません。摂食量を確認することと、なぜ食べられていないのかを考えることは、別のことです。


リフィーディング症候群の患者に教えられたこと

精神科身体合併症病棟で働いていた期間に、摂食障害で極度の低栄養状態にある患者さんを受け持つ経験をしました。

そのとき初めて、「栄養管理がこんなにシビアになる」という現実を知りました。

リフィーディング症候群とは

リフィーディング症候群(refeeding syndrome)は、長期間の飢餓・低栄養状態にある人に急激に栄養補給を行ったときに起こる代謝合併症です。

長期間栄養が不足した状態では、身体がエネルギーを確保するために筋肉や脂肪を分解するようになり、細胞内のリン・カリウム・マグネシウムが枯渇します。そこに急に栄養(特に糖質)を入れると、インスリンが急分泌されて、これらの電解質が血液中から細胞内に急激に移動する。その結果、血液中の電解質が急低下し、心不全・呼吸不全・意識障害など生命に関わる状態を引き起こすことがあります。

「栄養を入れることが危険になる」という、直感に反した病態です。

薬のカロリー・電解質まで管理する現場

その患者さんのケアでは、管理しなければならない項目の多さに圧倒されました。

カロリー管理は、食事だけではありませんでした。点滴に含まれるブドウ糖のカロリー、薬剤の溶解液に使うカロリー、場合によっては一部の薬剤自体が持つカロリー——それらをすべて足し合わせて、1日のカロリー総量を医師・管理栄養士と確認しながら管理していました。

電解質管理も、事細かでした。血液検査でリン・カリウム・マグネシウムの値を頻回に確認し、少しでも基準から外れれば補正の指示をもらう。補正の量と速度にも注意が必要で、急に補正しすぎることも危険です。

「大変だった」という言葉しか出てきませんが、それが正直なところです。

同時に、この経験があって初めて「栄養アセスメントをちゃんとやる意味」が自分の中に入ってきた気がしました。テンプレを埋めることの先に、こういう管理がある。アセスメントの数値は、治療の出発点なのだと。

精神科病棟のリアルについては「精神科看護師12年のリアル——そこで働いて初めてわかったこと」でも書いています。


低栄養患者への看護計画の考え方

低栄養患者さんへの看護計画は、「低栄養 看護計画」で検索する方も多いと思います。ここでは、テンプレの列挙ではなく「何のための計画か」を意識しながら書きます。

観察計画(OP)のポイント

  • 食事摂取量・摂取カロリーの確認(主食・副食・間食・水分量)
  • 体重の変化(毎日〜週1の定期測定)
  • 血液検査データ(Alb・プレアルブミン・RTP・電解質・CRP等)
  • BMIと体重減少率の経過
  • 消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢・便秘)
  • 浮腫の有無と程度
  • 身体所見(筋肉量・皮下脂肪・皮膚・口腔内状態)
  • 食欲の変化と影響因子(精神状態・薬剤・疼痛・環境等)

観察計画を書く意味は「テンプレを埋めるため」ではなく、「患者さんの変化に気づくため」です。日々の観察が、何かおかしいと気づくためのアンテナになります。

援助計画(TP)と教育計画(EP)

援助計画(TP)
– 食事の摂取しやすい環境整備(姿勢・食器・食事時間)
– 好みや嗜好を把握した食事内容の調整(管理栄養士への相談)
– 食欲不振の原因へのアプローチ(口腔ケア・疼痛緩和・不安の傾聴等)
– 栄養補助食品・補助栄養剤の活用
– 必要に応じた経管栄養・点滴栄養の管理

教育計画(EP)
– 患者さんへの栄養摂取の必要性の説明(押しつけにならない言い方で)
– 家族への協力依頼(好きな食べ物の情報収集・面会時の声かけ等)

高齢者の低栄養に対するアプローチ

地域包括ケア病棟での経験からも感じますが、高齢者の低栄養は特別な注意が必要です。

安静にしているだけで、筋肉量は急速に落ちます。食べる力(嚥下機能)が低下すれば、食事形態を変える必要があります。食欲不振と認知機能の低下が絡み合うケースも多く、「食べてもらうこと」の難しさは精神科以上かもしれません。

高齢者の栄養管理は、NSTへの相談や歯科・リハビリとの連携を早めに動かすことが、結果として患者さんの回復を早めることにつながります。


新人時代の自分に伝えたいこと

「患者さんが治療で良くなるために必要な基礎のものだと、当時の自分に伝えたいな」と思います。

栄養アセスメントは、手順書の一項目ではない。患者さんが元気になるための出発点だということ。それを最初からわかっていたら、もう少し丁寧に向き合えていたかもしれないと思うことがあります。

テンプレを入力することと、アセスメントすることは、別のことです。数値の意味を理解して、患者さんに何が起きているかを考えること。それができて初めて、看護計画が「患者さんのためのもの」になると今は感じています。

リフィーディング症候群のような経験をするまで、正直なところそこに気づけていませんでした。それは後悔というより、気づかせてもらったと思っています。

まだうまくできているとは言えません。今でも「これで合っているのかな」と思いながら観察しています。でもテンプレを埋めるだけだった自分より、少しだけ先に進めていると感じられる日があります。

一緒に、少しずつ続けていけたらと思います。


FAQ

Q:栄養アセスメントは管理栄養士の仕事では?看護師がやる必要はあるの?

栄養管理は多職種チームで行うものです。NSTでは看護師・医師・管理栄養士・薬剤師が連携し、それぞれの役割を持ちます。管理栄養士が食事内容や栄養補給の計画を立てる一方、患者さんに24時間近くいる看護師は、食事摂取量の変化・身体所見の変化・食欲に影響している要因——これらに最初に気づける立場にあります。

私も最初は「栄養のことは管理栄養士の仕事」という感覚がどこかにありました。でもリフィーディング症候群の患者さんと関わったとき、看護師が栄養状態を見る目を持っていないと、患者さんの変化に気づけないと実感しました。電解質の異変に最初に気づいたのも、バイタルと症状の変化を追っていた看護師でした。

「誰かがやる」ではなく、看護師として何を見るべきかを知っておくことが、患者さんを守ることにつながると思っています。


Q:低栄養の看護計画、アセスメントに何を書けばいいかわからない

観察計画の基本は、食事摂取量・体重変化・検査データ(Alb等)・身体所見です。教育計画には、患者さんと家族への栄養摂取の必要性の説明を含めます。

ただ、看護計画は「書くためのもの」ではなく「患者さんの変化に気づくためのもの」だと思っています。テンプレを埋めるだけだった自分が変わったのは、アセスメントで見た数値と、患者さんのベッドサイドで実際に起きていることがつながった瞬間からでした。

ひとつ視点を加えるとすれば、「食べない理由がすでに低栄養のせいかもしれない」という方向から考えてみるのもいいかもしれません。観察項目は同じでも、見ている目的が変わってきます。「摂取量が少ない=意欲低下」と一段で結びつけるのではなく、低栄養→食欲低下という方向の可能性も併せて考える。そうすると、計画に書く項目の意味がただのチェックリストではなくなります。

何を書けばいいか迷うときは、「この観察項目を確認して、何が変わったら次の行動につながるか」を考えてみると、項目の意味が少し変わってくるかもしれません。


もし「職場を変えることも選択肢のひとつ」と考え始めているなら、看護師の転職体験談——辞めて後悔したこと、してよかったことも読んでみてください。

この記事を読んでくれた看護師さんへ

看護技術を調べに来てくれてありがとうございます。1〜3年目の頃は「これで合ってる?」「先輩に聞きづらい」と毎日が手探りで、私も同じでした。

技術の不安以外にも、人間関係や夜勤、向き不向きで悩むことがあれば、同じ年代の看護師に向けて書いた記事もあります。よかったらどうぞ。

書いた人:ハロ|現役15年目の看護師。形成外科・整形外科・泌尿器・透析・精神科を経験。1年目は本気で「向いてない」と悩みました。プロフィール

病棟のベッドサイドで患者のそばに立つ看護師のイラスト

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読んでいただき、ありがとうございます。

看護の現場で「もう限界かも」と感じる夜があるなら、転職を「逃げ」と思わないでほしいです。場所を変えて、また穏やかに働けるようになった人を、私はたくさん見てきました。

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※ 必ず転職する必要はありません。「どんな選択肢があるか」を知るだけでも、きっと心が少し軽くなります。

この記事を書いた人

看護師歴15年。ICU・外科病棟・精神科身体合併症病棟・地域包括ケア病棟と4科を経験。現在も現役で病棟勤務をしています。

特に精神科身体合併症病棟では12年勤務し、精神疾患を抱えながら身体合併症の治療を要する患者さんと向き合ってきました。看取り、認知症ケア、終末期、急変対応――現場でしか得られないリアルを大切に、自分の体験と感情を正直に書くブログを運営しています。

「正解を教える」のではなく、「同じ目線で一緒に考える」スタンスで、読者の方が少し楽になる文章を目指しています。

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